ソライト

自然や旅、キャンプやアウトドアに関する事などについて、自分が感じたことや思った事などについて書いています。

【短編小説】 ツーリングキャンプ 〜バイクとキャンプで繋がる人との出会い〜 『ツーリング多め編』

ヤシの木が立つ海岸線沿いの道路

 時刻は朝の7時ごろ、僕は今、バイクにキャンプ道具を積んでいる。 今日の予定としては海沿いにあるキャンプ場に行ってハンモックを張りそこで一日のんびりと過ごす予定。その前にツーリング称して色んなところに寄ってその土地、土地の魅力を再発見、と言うか、言ってしまえばたまの休日を存分に楽しもうという魂胆。

今日のルートとしては、僕の家は海からは遠い山の側にあるので、山の峠道を通ってからちょっとした町を通り、海沿いに出て、いっとき海岸線沿いを走りキャンプ場に着く予定。

キャンプに必要な道具を載せ終わり、軽くバイクを拭きあげガレージから出して、エンジンを掛けることに。

今日はキャンプ道具を積んでいるので、バイクが少し重い。でもこの重さがなんとなく良い。(笑) そしてバイクにまたがりキックを出して思いっ切り踏み込む。

「ギィー!、ボォ、ボォ、ボォ、ボォ、ボォーン!、ボォーン!、ボォ、ボォ、ボォ」

エンジンは快調、日々の手入れがちゃんとしている証拠。 少しの間、エンジンを暖める、この時ふと思い出した、あるMOTOGPレーサーがレース前にバイクに向かって祈る様な感じを、僕も真似して今日一日を事故なく安全に楽しめる様に祈る。(笑)

エンジンも暖まった様子なので、いざ出発することに。

季節は夏も終わりに迫った頃、この時間帯はけっこう涼しくて快適。 でも日陰を通ると少し肌寒くも感じるが、この季節感を直に感じれるのがバイクならではというか車では味わえ無い感覚がまた良い。 ちなみに今日は週末で、仕事の人も少ないせいか車も少なくスイスイ走れる。

家から数分経って、少し山の中を通っているクネクネ道を走る。数年前はこういう峠道をレーサーレプリカのバイクでスピードを出して走っていたもんだ。 少しその時の気持ちが戻って来て、カーブで無駄に身体を横に倒したりしてみる。(笑)

そんな事をしながら気ままに走っていると、チラホラとバイクとすれ違う。するとバイク乗りならではの、知らない人でも同じバイク乗りという事で、すれ違い様に手を上げて挨拶をし合うのをした。この感じはバイク乗りにしか体験出来ない事で、特に地方に行った時に他のバイク乗りに手を上げて挨拶されると、すごく嬉しい気持ちになる。 でもたまに相手も手を上げてくれると思って、思いっきり手を上げて挨拶をしたら、気づいてくれないのか真相は定かではないけど何事もなかった様にすれ違う事があって、物凄く恥ずかしくなる事がある。 ましてや近くに他の車がいる時、その状態になるともっと恥ずかしい。「わぁ〜、あの人無視されてるぅ〜」みたいな。(笑)

、、、そんな事がありつつも走っていると、道の駅が出て来たのでとりあえず休憩を取る為に入った。 さすがは峠道の途中にある道の駅、すでにバイク乗りも数人居て楽しそうに談笑している。

ここでもバイク乗りならではだと思うが、「缶コーヒー」を片手にバイクを眺めながら、「このバイクは、この角度から見るのが良いんだよ!」などと言っている様子を垣間見る。

そして僕も当然の様に、自販機の前に行っていつも飲んでいる缶コーヒーを買う。バイクを眺めながら飲むコーヒーほど美味しいものは、この瞬間とキャンプの時にしかきっと味わえない、このひとときは僕にとって一つの貴重な時間だ。

「カシャ、カシャ」周りのバイク乗りがバイクの写真を撮っている。 それに釣られるように僕も写真を撮る事にした。 そしてここで登場するのが最近買った一眼カメラだ。お気に入りのバイクを良いカメラで撮りたくて、貯金をして買った。

何気に、バイク乗った出先でバイクの写真を撮るのは初めてなのでワクワクしていた。 「カシャ、カシャ」正直、まだ買ったばかりであまり使い方を分かっていないけど周りの目を気にして、得意げに撮ってる自分が居る。(笑)

すると、他のバイク乗りの人が、僕に話しかけに来てくれた。

「どうもぉ、良いバイクですね!」

「あ、ありがとうございます(照) (相手のバイクを見ながら)いやぁあのバイクも渋い感じで良いですね!」

すると僕のバイクに積んでいるキャンプ道具を見て。

「お? なんか積んで、、、あぁ!キャンプ道具かなにかですか?」

「そうなんですよ!、今日は海の側のキャンプ場に行って、ハンモックに揺られようかなぁ、なんて。(笑)」

「ほぇ〜、なんかすごく楽しそうだなぁ!キャンプかぁ子供の時以来していないなぁ、、、。」

なんて事を話していると、その人の友人達も交えて少しの間、バイクやキャンプの話で盛り上がった。

ガヤ、ガヤ、、、。

「、、、じゃあ、そろそろ行こうか、キャンプの話を聞かせてくれてありがとね!僕らもキャンプしたくなったよ」

「いえ、こちらこそ楽しかったです! ありがとうございました!」

その人達と僕は互いのツーリングの無事を祈って、一足先に出て行ったその人達を見送り、その数分後に僕も道の駅を出た。 こうしてバイク乗りはもとより、同じ趣味を持った人達同士で話あえるのはすごく楽しい。

時刻は9時前、峠道は続く。 僕は軽快にバイクを走らせながら次第に増えていくバイクとすれ違い様に手を上げ挨拶をする。

アップダウンを繰り返し、橋の下を通る川に涼を感じながら走り続ける。 そうしていると山の中の峠道も終わりに近づき、町外れにある民家や小さなお店が少しづつ現れ始めた。

すると1キロ先に「定食屋」があるとの看板が、、、。 今日の朝は朝食を取っていなかったのでその看板を見て、少しお腹が減ってきた。 多分前々から気になっていたお店なんだけど、あまり行く機会が無かったのでいつもスルーしていた。 、、、けど今日は、お腹も減っていることだし寄ってみようかなと思う。

少し走っていると、先ほどの看板に載っていたと思われるお店に到着した。よく見てみると、開店は10時からだそう。 現在時刻は9時半過ぎ、開店まで後少しなのでしばしのあいだ待つ事にした。 するとお店の中から一人の若い青年が出て来て、のれんを掛けたり、店の前に水を撒いたりしている。

その青年は僕の方をチラチラ見ている。 すると僕が開店時間を待っているのに気遣ってか話しかけて来てくれて、「開店時間待っているんですか? よかったら中に入ってても良いですよ」と言ってくれた。

僕は遠慮しながらも気付けばお店の中に入っていた。調理場には、その青年以外にその青年のお父さんと思われる人も居て、開店前の準備をしていた。 水を流している音や調理器具がカチャカチャと鳴っている音が、実家の朝を思い出させる。

すると青年が、「今日は何処かでキャンプですか?」と聞いて来た。 どうやらさっき、僕のバイクを見て分かった様で、水を差し出しながら話しかけて来てくれた。

僕は「そうそう! よく分かったねぇ!」

「メーカーを見て分かりました。 僕も何回かキャンプをしていて、、、。実はこの間も行って来たんですよ。この間はいろいろ大変でしたけど(笑)」

その青年は作業をしながらも僕と、キャンプのここが良いみたいな話をして盛り上がった。

、、、時刻は10時になりお店は開店。 立ち込める調理場からの湯気、部屋の隅っこの上にあるテレビが付く、開店して数分経つと数人のお客さんが入って来た。 「いらっしゃいませー!」 青年とそのお父さんの元気な声が店内に響き渡る。

良い匂いがしてきたなぁと思ったら、僕の所に先ほど注文していた、生姜焼き定食がきた。 「お待たせしましたっ、どうぞごゆっくりー」

良い匂いと美味しそうな生姜焼きが食欲をそそる。この時にはもうお腹ペコペコだったので到着するや否や、すぐに生姜焼きを頬張った。「おいしいっ」

すると常連さんなのか、一人のおじいちゃんが入って来て入り口に一番近いカウンター席に座り「いつものくれ」と一言。 青年も慣れた様子で「味噌汁はいる?いらない?」と聞いている。 まぁ定食屋さんだし常連さんくらいは居るかと、特に気にせず生姜焼き定食を食べていた。

賑やかな店内、ガヤガヤと笑い声も聞こえてくる。 町外れの定食屋、地元の人に愛されている感じで良い雰囲気だ。

すると、先ほどのおじいちゃんが青年に向かって「この前のキャンプは楽しかったか?」と聞いている。

「うん、結果的にはね! いやぁでも、それが結構大変でさぁ、焚き火は着かないし、フライパンは忘れているしで、でもキャンプ場に居た一人のおじさんに、焚き火を分けて貰ったりフライパンを借りたお礼と言うか、よく店で出す生姜焼きを作って一緒に食べたりしたんだよ。」

「、、、ほぉ、そうかそうか、その人は喜んでくれたか?」

「うん、でもまさかキャンプ場で生姜焼きを食べるとは思ってなかったみたいだけど。(笑)」

「懐かしいなぁ、ワシもその昔、お前みたいにフライパンを忘れて困っていたカップルに、ここで使っていたフライパンとかを貸した覚えがある。」

「あぁ、そう言えばその時のフライパン、うちで使っている物と一緒だったよ。」

「ん? ハッハッ! もしかしたらその人が、その当時の青年だったかもな。」

「まさかっ!(笑)」

僕はその話に耳を傾けながら、生姜焼き定食を食べ終わり、食器類をカウンター横の返却場所に置いて会計をした。

すると、青年が「あ、じいちゃんじいちゃん、このお兄さん今からキャンプに行くんだって。ほら外にバイクがあったの見たでしょ、、、。」

「ほー、バイクでかぁ、そりゃ良いなぁ。 この辺りだと町を抜けて海岸線沿いに行ったとこにあるキャンプ場が良いわ。もしかしてそこに行くんかぁ?」

「あ、はい、そうなんです(笑)まぁただ、ハンモックに揺られながら海を眺めようかなぁなんて、、、。」

「へぇー!ハンモックかぁ気持ち良さそう!」

「良い良い、キャンプは自由じゃ、自分のしたいと思うキャンプをしたらええ、、、。気をつけて楽しんでな」

「は、はい、ではっ!」

続いて青年も「ありがとうございました! 僕もまたキャンプに行きますね! じゃ気をつけて楽しんで!」

「ご馳走様!はーいありがとう。またねぇ」 僕は心もお腹も満たされて良い気分になり、再びバイクを走らせた、、、。

【短編小説】 ツーリングキャンプ 〜バイクとキャンプで繋がる人との出会い〜

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