ソライト

自然や旅、キャンプやアウトドアに関する事などについて、自分が感じたことや思った事などについて書いています。

【短編小説】 自然の恵みを食すブッシュクラフトキャンプ 『中編』

渓流の様子

 

(今回は下の記事からの続きになります。)

www.nature-suzu.com

 

 僕は、釣り道具を持ってまずは、川の下流の方へ向かった。 少し歩いてやっぱり気になる、、、ふと後ろを振り返ると自分が設営した宿営地。、、、うん、やはり良い感じだ。

アースカラーのキャンプギアが自然に溶け込んでいる感じがなんとも良い。僕は思わずスマホを取り出して写真を撮った。

写真を撮り終わって僕は再度、下流の方へ向かって歩き始める。 川に沿って林の中を歩いていると、川の流れが変わる場所があり、その度に川の音色も変わる。

岩と岩の間や少し落差のある所は、「ザァザァー!、、、。」と、、、平坦が続く所は「チョロチョロチョロ〜ッ、、、。」と静かな川のせせらぎと言った感じの音色。

2つとも両極端の音色だが、そこが川の良いところ、更には言えばその音色と共に鳥の鳴き声や微かに夏の面影残るセミの鳴き声。 それはもう自然の音楽にすら聴こえる。

僕は自然の音楽を聴きながら歩いた。そして林の方からさらに川に近づき、石や岩が転がっている上を移動し始める。 足元にはゴツゴツとした石や岩、もし転んで頭など打ったら危険だ。僕は集中して歩く、、、。

キャンプ場から下流に向かってある程度、歩いて来た。「よしっ、この辺りから、上流に向かって渓流釣りスタートだ。」

季節はは秋口、この時期は大きいサイズが多いと聞くので、もちろん大物狙いでいく。 ヤマメにイワナ、アマゴなど、どんな魚が釣れるかが楽しみだ。

ちなみに今回はルアー釣り。持って来たルアーの種類は一応「ミノー、スピナー、スプーン」を持って来たが、とりあえず今回は「※ミノー」を使う事にした。 僕はルアーをセットして、ひとまず様子を探る為にいろんなポイントに投げ入れた。(※小魚のかたちをしたルアー)

竿さきを「チョン、チョン」と動かしてみたりと、上流に向かって移動しながら、投げ込むポイントも変えながら何度も投げる。 瀬や落ち込み、流れ込みなどに投げていく。しかし季節はシーズン終了時期の秋口、春や夏の時期みたいにそう簡単にはなかなか釣れない、けど、大物が釣れる可能性もある、じれったい感じそれがむしろ楽しかったりする。 何度トライしても釣れなくて、それでも諦めずにトライして釣れた時の喜びと言ったら、、、。

その後もポイントを変えながら上流に進んで行く。そして気付いたらキャンプ場の所まで戻って来ていた。ふと、キャンプ場の方向を見ると杉林越しに煙が上がっているのが見える。他のキャンパーさんが焚き火をしているんだろう。 空に上がっていく焚き火の煙を見て僕は、釣った魚を串焼きにしているのを想像し、がぜんヤル気が出て来た。

「よしっ!大物を釣るぞ!」

ポイントを変えながら進む、キャンプ場の横を流れている川も過ぎて、さらに上流に上がって行く。しかしなかなか釣れない、大物が居そうな瀬尻やトロ場を狙って投げてみるが釣れない、、、。

「まだまだこれからっ」僕はそう言い、投げ込むポイントを変えてはさらに上流へ進んで行く。 すると上流側、前の方に同じく渓流釣りをしている人がいる様子。僕は気になって話しをしに行ってみた。

「こんにちはっ! どうです?釣れてますか?」 と、急に声を掛けたので、その釣り人は驚いた様子でこちらに振り向くと、どうやら女性の方みたいで、僕も少し驚いてしまった。

「わぁ!あぁ!こんにちは! びっくりした!(笑) 全然気づかなかったです、え、と、、、う〜ん、まぁこれくらいです、今日はあんまりですねぇ、、、。」

女性はそう言って、竹で編んだカゴの中を見せてくれた。するとその中には赤い斑点がキレイなアマゴと背中の斑紋が特徴的なイワナが居た。 僕はそれを見て「うわぁ、すごいじゃないですかぁ!僕まだ1匹も釣れてないですよぉ、、、。」と言い、続け様に「けっこう釣りをしてそうな雰囲気なんですけど、釣り歴は長いんですか?」と、使っている釣り道具がフライフィッシング用の物と、女性にしては珍しかったのでいろいろ気になり聞いてみた。

「う〜ん、どれくらいかなぁ、でも小さい時から親に連れられて一緒にしていたんで、歴だけは一丁前に長いかもですね!(笑)」

「なるほどなぁ!どおりでぇ!」

そんなの話をしているうちに、話がはずみ、少しだけ一緒に釣りをする事にした。女性は、慣れた手つきで投げていく。フライフィッシングの独特な投げ方に感動していると、いきなり当たりが来たようで、「うわぁ、キタァキタァ! これ大きいですよ!」女性はかなり必死で、でも僕はフライフィッシングのことが全く分からないので、とにかく「がんばれ!がんばれ!」と言う事しかできなかった。

すると、検討もむなしくも逃げられたようだ。「あ!だめだ!逃げられちゃったぁ! 惜しかったなぁ、でも今のは大きかったと思いますよ!」

女性は、すでに2匹釣れているので、とりあえずはもう充分といった感じだったので、それならと今度は僕が釣る事にしてみた。

「私が投げた後すぐだから警戒してるかも知れないですけど、もう一度あの深い所を狙ってみますか、、、。」と言い、女性が僕に釣れそうな所やさばき方などをレクチャーをしてくれた。

僕は今日まだ1匹も釣れていないので、この一投に全てをかける勢いで投げ込んだ、、、。

するとまさか食いついて来た! 引き的には先程のを連想させる勢いで大物間違いない!

女性は真顔で「落ち着けぇ!落ち着けぇ!一気に引くなよ!」

僕は「(うわぁ人変わってるぅ!?)」と思いながらも「はいっ!分かりました!」と言い

「今だ!引けえぇぇ!」と女性が叫んだと共に僕は「はいっ!!」と、一気に引き上げた!

「バシャァァン!」、、、と、大きな水しぶきと共に天高く上がり、太陽に照らされてシルエットと化したその姿はかなりの大物!

そして、その魚影は僕のところに落ちて来て、僕は目を閉じながらキャッチした。 暴れる魚をどうにか逃がさないように必死に抱き抱える。

少し落ち着いたので、サイズを測ることにした、するとサイズは30センチを超えているであろう大ヤマメ!

僕と女性は2人して喜んだ。

「これは大きいのが釣れた!と言うか2人で釣り上げたようなもんですよ!と言うかあなたのお陰ですよ!と言うかこれ僕が釣ったって事で貰っていいんですか!?」僕は大物が釣れたことにより興奮していた。

「もちろんいいですよ!よかったですね!」

僕は嬉しくなり、その釣り上げたヤマメを写真に収め、とりあえず今回の渓流釣りを終わる事にした。

「いやぁ、楽しかったです! このヤマメは大きいから食べがいがありますね! 串焼きにしたり、アルミホイル焼きとかにして食べると美味しいですよ!」

「実はちょうど今日、キャンプ場でキャンプしてるので、釣れたら串焼きにしようと思ってたんですよ。ものすごく楽しみです。(笑)」

「え!? そうなんですか!? 私は昨日からキャンプしてたんですよ(笑)今日はもう片付けも終わって、その前に釣りをして帰ろうと思って、今現在に至るんですけど。」

「えっ!? 驚いたなぁ! キャンプもするんですね!? ここまでアクティブな女性はなかなか居ないですよ!(笑)」

「いやでも、釣りは前からしていたんですけどぉ、キャンプについては最近始めたんですよ! と言うのもこの前、海釣りをしている時にその場所がキャンプ場も併設している所で、とりあえず釣れたので帰ろうとしていたら、気持ち良さそうにハンモックに揺られているキャンパーさんが居て、それで私が物を落としてしまって、それをそのキャンパーさんが拾ってくれて、そこからお互いがお互いのしている事に興味があったので、釣りやキャンプについての話ではずんで、けっきょく私、その帰りにキャンプ用品店に行ってハンモックとかのキャンプ道具を買って帰ったんですよ!(笑) で、今日はその買ったキャンプ道具でキャンプと渓流釣りをしに来たって事です!」

「そうだったんだぁ! ホント、人との出会いは一期一会ですねぇ(笑) 僕も今回、フライフィッシングを見せてもらってかなり興味が湧いて来ました! もし今度また会った時、僕はフライフィッシングをしているかも知れないですよ(笑)」

そんな会話をしながら車を停めてあるキャンプ場に向かう。 そして僕はその女性を見送った後に宿営地に戻る事に、、、。

「今日はホントありがとうございました!」

「いやいや!それはこっちのセリフですよ!こんな大物が釣れたのもあなたのお陰です! 、、、それじゃ、運転に気をつけて!」

僕は、感謝の意を込めて女性の車がカーブに差し掛かり見えなくなるまで見送った。

改めて、こうして人と接するのは面白いなぁと思ったし、同じ様な趣味を持っていると言うのが尚良くて、知らない人同士でも、グッと距離が縮まるのが良い。それも釣りのお陰、さらに言えば自然と言う素晴らしい環境があるからだ。僕は女性と自然に感謝した、、、。

、、、と、感謝しながらも僕は、宿営地に帰る道中にこの釣ったヤマメの出来上がりを想像してヨダレが出そうになっていた、、、。

【短編小説】 自然の恵みを食すブッシュクラフトキャンプ 『中編』 続く