ソライト

自然や旅、キャンプやアウトドアに関する事などについて、自分が感じたことや思った事などについて書いています。

【短編小説】 ツーリングキャンプ 〜バイクとキャンプで繋がる人との出会い〜『海の見えるキャンプ場でハンモック』

(今回の小説は下の続きからになります。)

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 町外れから、少し賑わいを見せる町中を通るとすぐに海が見え始めた。 山の景色の次は海の景色で、なんと贅沢なルートを僕は走っているんだろう、、、なんて考えながら走っている。

海の雰囲気や匂いを感じながら、港町や漁港の側を通る。 僕は山側に住んでいるのでこういった、港町の雰囲気がとても好きだ。 港町を抜けると海のすぐ側に道が通ってて、海と道路を挟んだ山側には線路が通っている。

気持ちよく走っていると、「ガタン!ガタン!、、、ガタン!ガタン!」と言う音と共に、まもなく列車が僕を抜かして行った。

列車は2両編成の観光列車の様だ。 中では、海にカメラを向けて写真を撮っている人もいる。すると、その中にいた一人の子供が僕のバイクに気付いたのか、手を振ってくれた。それを見て僕も手を振り返した。 トンネルに入っていく列車の中で一生懸命に手を振ってくれている子供に微笑ましさすら覚えた。

潮風を感じながらひたすらバイクを走らせる。 反対車線からは数十台はいるであろうツーリングの団体が走ってきた。ハーレーからレーサータイプ、中にはレトロなバイクまで多種多様。 そしてすれ違い様にみんな手を上げて挨拶をしてくれる。

前方に長いトンネル、トンネルに入るとバイクの音がよりこだまする。いろんなバイクの音が混じり合ったトンネル内、もはや一つのメロディにすら聞こえてくる。

1キロ近くはあるトンネルを抜けると、再び海の景色とちょっとしたビーチがあり、そこにはたくさんのサーファーが居た。波もそれなりにある様子で、ボードに掴まりながらプカプカと浮いている人もいれば、上手に波に乗っている人も居る。 その様子を横目に、「一度で良いから、僕もサーフィンをしてみたいなぁ」なんて思いつつ、さらにバイクを走らせる。

すると、ようやくキャンプ場の看板が出てきた。 少し細い道に入るとクネクネ道が続く。ここはどうやら岬にあるキャンプ場みたいだ。 細いクネクネ道をさらに進むと、高台とその下にテントサイトが2つの場所に分かれたキャンプ場に着いた。

すでに数組のキャンパーさんが居て、ファミリーやソロ、人それぞれで楽しんでいる様子。 中には海で釣りをしている人も居る。

高台と下の方のどちらにするか迷ったが、今回はハンモックを持って来ているので、ハンモックを張るのにちょうど良さそうな2本のヤシの木がある、下の方のテントサイトにした。

僕はバイクをそのヤシの木のそばに止め、キャンプ道具を下ろす事に。 時刻は12時過ぎ、今日は軽いキャンプをする予定だったので、荷物も比較的少な目。 ハンモックやタープ、ガスストーブに前日に仕込んで置いたポトフの材料を置き、まずはハンモックを張る事にした。

ちょうど良い感覚でヤシの木が立っていて、目の前には太平洋が見れる絶景。 この絶景をハンモックに揺られながら見たいと、急いでハンモックを張った。

そしてハンモックとタープも張り終わり、しばしの間、海を眺めながらハンモックに揺られる事に、、、。

、、、海の方、遠くの方で大きな船が汽笛を鳴らしている音が、近くでは波が打ち寄せる音、たまにトンビの鳴き声も聞こえてくる。 いつもは山の方のキャンプ場なのでこういう海のそばにあるキャンプ場でのキャンプは新鮮だ。

僕は思い立った様に、カメラを取り出してこの絶景をバックに、ハンモックに揺られる自分の姿を撮ったりしていた。ヤシの木の間に張っているハンモックがかなり絵になってる。(僕は要らないな、、、。)

その後も、新しく買ったカメラで存分に写真を撮った。

、、、そろそろお腹も減って来たので、持参したポトフをクッカーに入れ、水を注ぎ、ガスストーブの火を付ける。 周りではバーベキューをしているのか、お肉の焼けた良いぃ匂いがしてくる。

そしてポトフもグツグツと煮てきたので、コンソメを入れる事に。するとコンソメの溶けた香りが鼻を通り、その香りに僕の食欲がさらに掻き立てられた。

ポトフも出来上がりハンモックに座って、海を眺めながらポトフを食べる。ポトフの香りと潮の香り、そして絶景の海とハンモックに揺られる感覚も相まって、もう最高に美味しい!

ポトフも食べ終わって、ハンモックに座りながらボーッと海を眺めていると、釣りをしていた人が、両手一杯の荷物を持ち「ヨイショ、ヨイショ」といった感じで歩いていた。 さっきは気付かなかったがよく見ると、女性の釣り人みたいだ。

僕のハンモックの前を通る時、軽い挨拶をしたその人の荷物から、ポロッと何かが落ちたので僕は拾ってあげた。 でも明らかに「もう持てません、、、。」といった感じでコッチを見て訴えかけていたので、少しほくそ笑みながら女性の車の所まで運んであげることにした。

「ふぅ! ありがとうございます、助かりました!」

「いえ、全然! 、、、ところで何か釣れましたか?」

正直、僕は釣りにも興味があったので、どんな魚が釣れたのか気になって聞いてみた。

「まぁまぁですかね!」

女性がクーラーボックスを見せてくれたので、中を覗き込むとそこには数匹の魚がいた。そこまで魚の名前に詳しい訳ではないがクロダイか何かの魚もいて、僕は驚いた。

「ほぇ〜、ここでもこんなのが釣れるんですねぇ!」

「ホント釣れましたねっ、実はここでの釣りは初めてなんですけど。私自身もビックリしましたよ!(笑)」

「へぇー! 初めての場所でこんなに釣れるなんて凄いじゃないですか! けっこう釣りはするんですか?」

「時間を見つけては、海や川に行って釣りをしてます!」

「それにしてもハンモックも気持ち良さそうでしたね!」

「え?あ、あぁ!まぁ、海を眺めながらは特に気持ちが良いですよ!」

「私もキャンプ中に釣りをして、釣った魚を焼いて食べる、なんてキャンプをしてみたいなぁと思っていたので、キャンプをしている様子を見て俄然キャンプに興味が湧きました!」

そんな話をしながら、「また、どこかのキャンプ場で会えたら良いですね!」と女性に言われて、少しドキッとした自分も居た。

そしてその女性と別れを交わしたあと、僕も釣りに俄然興味が湧いてきたのは言うまでもなく、今度のキャンプでは釣りをして釣った魚で料理をしようかなぁなんてさっきの女性と同じ事を考えていた。

僕はテントサイトに戻り、またいっときの間、ハンモックに揺られていた。 時刻は2時、気持ち良くハンモックに揺られていると、新たなキャンパーさん達が来て、僕の数メートル近くにテントを張りけっこう騒いでいる。どうやら大学生ぐらいの子達だ。

そして数人の釣り人が来た。結構ガヤガヤと騒いでいる様子で見た目は少しガラの悪そうな若い釣り人達。

釣り場のポイントに行く為の道が、僕がハンモックを張っている数メートル前にあるので、僕は「うわぁ、ガラの悪そうな人達、絡まれたら嫌だなぁ、、、。」なんて思っていると、案の定、僕のハンモックに興味を持ったのか

「あぁ!めっちゃハンモック気持ち良さそうじゃん! 良いなぁ兄ちゃん!気持いやろ!」

と言われ、僕は「あ、え、まぁ、は、はい、、ははは、、(笑)」と言うしかなく、続けて

「俺ら釣りに来たんだけど、ここなにが釣れるか知らん?」と言われ、さっきの女性が釣れていたので、「、、、多分、クロダイとか釣れると思いますけど、、、。」と言い。

「おぉ?マジ!? じゃ、早よ行って釣ろうや!、、、。んじゃ、教えてくれてありがとな兄ちゃん!」

僕はあの女性が釣れたからといって、この人達が釣れるとは限らない事に、今更気付いて、またなんか絡まれたら嫌だし、「釣れんかったぞ!」なんて言われるんじゃないかと思ったし、しかも近くの大学生達は騒がしいので、ここから退散しようとキャンプ道具を急いで片付けた。

ガラの悪そうな人達は楽しそうに、釣りをしている。僕はバイクにキャンプ道具を積み終わり早々にキャンプ場を出た。 よくよく考えたら多分、僕より若い人達だろうけど、コワイものはコワイ、、、。

とりあえずキャンプ場を出たけど、まだ時間はあるし、帰るのには少し早いのでこのあとどうしようかなぁなんて考えて、それならと少し遠回りだけど市内の方にキャンプ用品もある大型商業施設に行くことにした。

市内までは途中まで来た道を引き返す、もちろん海の景色を眺めながら、、、。

約1時間程バイクを走らせた後、商業施設に着きバイクを止めて目的のキャンプ用品店を目指した。 ここは最近できた場所らしく実は僕自身来るのは初めて。そのお店の前に到着すると店の前からでも分かるぐらいにキャンプ道具がズラリと並んでいた。

やっぱり初めて来るキャンプ用品店は、初めて使うキャンプ道具みたいにワクワクする。僕はさっそうとお店に入り、くまなくキャンプ道具を物色した。 僕自身キャンプ歴は数年経つので見慣れた物もあるが、中には初めて見る物もあり興味深々。一つ一つをじっくりと、まるで子供の頃に戻った様な感じでなんだかんだ1時間は物色し続けた。

すると、ツーリングキャンプに持って来いであろうコンパクトな「焚き火台」があり、「うわぁー、これ欲しぃぃ!!!」と僕はついつい思ってしまった。

、、、僕はその焚き火台を見て買うか悩んでいた、実は先日買ったばかりの、別の焚き火台があるのに、、、ましてやその焚き火台はまだ使っていないのに、、、。なんだか、浮気をしている様で、、、、、、と思ったが、こうしてこの焚き火台と出会ったのも何かの運命かと思い、結局は買ってしまった。

僕は会計を済ませルンルン気分で、バイクを止めてある商業施設の駐車場に歩いていた。すると前から、さっきのキャンプ場に居たガラの悪そうな人達が歩いて来ていた。僕は「うわぁ、なんでいんの!?」と思い、顔を伏せたが、時すでに遅し。

その人達はハッキリと僕の顔を覚えていたようで、「おぉ! さっきのハンモックの兄ちゃんやろ!?」と声を掛けられた。

僕は少し嫌な予感がした、さっきクロダイとか釣れると思いますよと言ったが、もし魚が釣れてなくて、八つ当たりなんかされたら最悪だと、、、。

すると、その人達は「いやぁ、兄ちゃんが言った通り釣れたわ、クロダイ! しかも全員が!」

僕は一瞬「へっ!?」とした感じになったが、「あっ、あぁー! スゴイ!良かったです!良かったですね!」と返事し、その人達は「ありがとなぁ!」となんでお礼を言われたのか分からないが、そのままその商業施設の中に入って行った。

、、、本当はここからもう家に帰るつもりだったが、ホッとしたのも半分、正直まだキャンプをし足りなかったので(さっき途中で帰ったので)、近くにキャンプ場があればそこに一泊しようと考えた。 市内の方なので無いかもなと思いつつ、僕は必死にスマホで調べた。 すると少しこじんまりとしているが、ビーチに隣接しているキャンプ場を発見した。 ここからは約20分ほど、僕は「ここしかない!」と思いすぐに予約の電話を入れた。 すると予約は大丈夫だけど、チェックインの時間が5時までとのこと。「現在時刻4時30分!」

「よしっ行ける!」と思い、僕は予約をして急いでそのキャンプ場に向かった。

風を斬りながら、バイクを操る僕は、まるで「MOTOGPレーサー!」

とは言いつつも、制限速度はしっかりと守り走行。 そして無事、チェックイン時間に間に合った。 受付を済ませてテントサイトに行く、すると幸運にもハンモックを張るのにちょうどいい木があった。もちろんそこを定位置と決めてハンモックを張る。 時刻は夕方6時ごろ、ベストタイミングか夕日が山の方に沈んでいく瞬間、辺りはオレンジ色のなんとも幻想的な色合いに。 僕は思い立ったようにカメラを取り出しカメラを構え最高のシャッターチャンスを伺った、、、。

すると、管理人が「あぁ、居た居た!ごめん、ごめん!まだ書いてもらう紙があったんだった!」と、、、。

、、、、、、。

、、、僕は沈んでいく夕日をバックに、まだ間に合うかもと急いでその紙に必要事項を書いた。 けど、管理人がヘッドライトで照らして始めたのを見て、僕は悟った様に丁寧に書いた。

、、、辺りはだんだんと暗くなり、ビーチ沿いの何キロか先に光る市内の明かりが、一際目立ち始めた。

「あっ!そうだ」 、、、と、僕はさっき買った、焚き火台を出して組み立てていく。新品で焼け色が着いていない焚き火台。これを使っていくうちに良い焼き色にしていくのが楽しみで仕方ない。

そしてよくよく見ると、このキャンプ場にいるのは僕一人の様だ。 貸し切り気分になんだか嬉しくなった。 ヘッドライトを付けてビーチに行き、薪として使えそうな流木を探す。コンパクトな焚き火台なのでそこまで多くの薪は要らないはずと、小さいものも拾っていく。

ある程度拾い終え、ハンモックのある所に戻る途中、僕は気付いた、、、。

「あっ、夜に食べる物をなにも買ってない」、、、と。

「でも一食分、食べないくらいは我慢できる」ととりあえず戻り、新しい焚き火台に薪をくべて火を付ける。

ヘッドライトを消す、、、暗闇を照らす、焚き火の明るすぎない火が落ち着く。そして焚き火台の側面の切れ込みから見える火も、さり気なくてこれまたオツだ。

、、、。 、、、。「グゥ〜」

「ハラヘッタ、、、。」

管理棟の方を見るとかすかに明かりが点いていた。 僕はそこに最後の希望を残し歩いていく。 「コンコンコン(ドアを叩く音) あの〜すみませ〜ん」

「ガチャ」、、、ドアが開く。

「はい?どうしました?」

僕は何か食べれる様な物は売っていないか聞いた。

「いやぁウチは売店とかは無いからなぁ、、、。 う〜ん、、、あっ!夜食に食べようと思っていたカップ麺があるんだった。それで良いならあげるよ、ちょうど2つあるし」

「えっ!? いいんですか!? でも、、、。」

「いいよ、いいよ、しかもさっき夕日を撮り損ねたでしょ、分かってたよ、それも私が紙を書かせたからだし、その分と言うか、どうせ私はいつでも買いに行けるし」

「は、はぁ、でも、、、(確かにベストタイミングだった) 、、、じゃ遠慮なく貰います!」

僕は管理人にもらったカップ麺を食べるため、昼にポトフで使ったクッカーに水を入れ、焚き火でお湯を沸かした。 お湯が沸くまでのしばしの間、ハンモックに揺られながらかすかに出始めた星を眺める。

、、、それにしても今日は、いろんな出来事や出会いがあった。こんなに忙しい休日は久々、でも新しい焚き火台とキャンプ場も見つけてなんだこんだ幸せな1日だ。

カップ麺ができあがる時間に設定していた、スマホのアラーム音がなる。 フタを開け、暗い夜の空に上がっていく湯気を見向きもせず、麺を食らう、、、。

「美味しいっ! 管理人さんご馳走様です!」

あっという間に食べ終わり、再びハンモックに揺られる。 ハンモックの中で僕は日課のブログを書くことに。今日あった出来事を、出会いを、買った物を、、、。

僕は疲れていたのもあり、気付いたら眠っていた様だ。

、、、そして早朝、太陽が太平洋の水平線状に顔を出し始めているところだった。 僕は目にも止まらぬ速さで、カメラを構え、昨夜の無念を晴らすようにシャッターを切っていく。 朝日をバックにバイクの写真を、そしてバイクとハンモックと僕を一緒に、、、。ひたすらにシャッターを、、、。

、、、シャッターを切りながら、僕は思い出していた、、、。

、、、あっ、今日仕事だった、、、。(どうりで人が居ない訳だ)

【短編小説】 ツーリングキャンプ 〜バイクとキャンプで繋がる人との出会い〜

『海の見えるキャンプ場でハンモック』