【短編小説】俺のソロキャンプ『前編』
「※この話は、どこにでも居るごく普通の中年男性の「キャンプ」の話。(フィクションです。)」
【短編小説】俺のソロキャンプ『前編』
50歳を過ぎて子供も自立してから、ファミリーキャンプではなく、ソロキャンプをする事が多くなった俺。
今週は土曜と日曜日が休みなので、今回は久々の泊まりのキャンプに来ている。
場所は、一年程前にソロキャンプを始めた頃から来始めている、山奥のキャンプ場。
俺は「春夏秋冬」それぞれの季節で、このキャンプ場を経験していて、キャンプ場周辺の見所などをそれなりに把握している。
それにしても仕事か年齢か最近は少し疲れ気味で、今日は朝10時からキャンプ場に来ているが、テントやら何やらをある程度設営し終わったら、いつの間にか寝てしまっていた。
起きた時にはもう昼過ぎ、とりあえず昼食をと思いカップラーメンを食べて、昼食後は読書をしたりキャンプ場の付近を散策したりした。そうこうしているうちにいつの間にか夕方になってた。
最近一日の時間がとても短く感じる、、、でも本当のキャンプの時間は「ここから(夜)」だと、俺は思っている。
このキャンプ場は、今では珍しく「直火OK」のキャンプ場だが、今回は新しく買っていた「ピコグリル」の焚き火台を使うと決めている。
「ムフフッ、、、。」
妻に内緒にしていた「ヘソクリ」で買った。
1万4000円はしたが(たけぇぇ)、最近YouTubeやSNSでよく見ていて、つい欲しくなり買ってしまった。
今日はこの焚き火台で、焚き火を堪能した後は「ステーキ」を喰らうと決めている。
「おっと、よだれが、、、。」
ステーキと言えば、昼間に声を掛けた青年が、帰り際に声を掛けてくれて、「今日の夜のキャンプ飯はなんですか?」と聞かれたので、
「今日は「ステーキ」だよ。」と言ったら、青年が羨ましそうな顔をしてたのを思い出した。
そう言えば、あの青年が使っているタープが、自分が欲しいと思っていたタープだった。 確かあれは「DD hammocks」のタープだったような?
俺自身、年齢が50歳を過ぎた辺りから少し渋い感じのギアが欲しくなってきている。 今使っている、タープやテントは蛍光色の緑色とか黄色が入っているものだし、そこまで派手ではないけど、やっぱり年相応のが良いし、そもそもほつれとかスリ傷みたいなのとかも増えてきたので、そろそろ買い替えたい頃。
ついでに、同じくDD hammocksから出ている「ピラミッドテント」も良いな。 でも、今月はもうお小遣いもヘソクリもあんまりないから諦めるしかない。
「来月にでも買おうかな?、、、。」
「リーン、リーン、リーン、、、。」
辺りも暗くなって来て、少しずつ鈴虫やコオロギの鳴き声が目立つようになって来た。 そしてこの時間帯になって来て、より楽しめる事が、、、。
そう「焚き火Time」。
新しく買った、ピコグリルを組み立てる。
「カチャン、ガチャ、ガチャ」、、、。金属音の当たる音が夜のキャンプ場に響く。 今はまだ新品だが、いずれ、このピコグリルの使い込んできた感が出るのも楽しみのひとつだ。
「薪」はキャンプ場に落ちている木の枝などを拾う事もできたけど、自然の物は湿気が残っていて「煙」が出やすいので、事前に比較的乾燥している、ホームセンターの薪を買っておいた。
薪の種類は「針葉樹」か「広葉樹」で少し悩んだが、焚き火を長い時間楽しみたいので、今回は広葉樹にした。
そして、ピコグリルに薪をくべていく。 パッと見、ピコグリルは足も細くて安定性がなさそうだが、意外にいけそうだ。
すると予想はしていたが、薪が少し大きかったようで、少々はみ出している。 そう言えば、ピコグリルを使っている人の写真や動画を見ると、たまにはみ出しているのを見たな。(笑)
それはいいとして、さっそく火をつける事に。 今回はシンプルに「マッチ」でつける。 薪に火をつける時のコツとしては、薪をくべる時に例えば「新聞紙→細い木の枝→中くらいの木の枝」と徐々に燃えやすいものから、薪を大きくしていくと良い、、、とYouTubeで知った。「YouTube様々。」
マッチを擦り、ほぐした麻紐に火をつける。
小さく細い木の枝から徐々に燃えていく、火力が増していくとともに、広葉樹の薪も徐々に燃えていく。
そして、暗い夜のキャンプ場のひと隅が焚き火で明るくなっていく。
不規則に揺れる「焚き火」、、、。
焚き火の灯りに照らされる、テントや周辺の木、、、。
この感じ、この時間が大好きだ。
この心が落ち着く感じがなんとも言えない。
いっときの癒しの時間を堪能する。
「パチッ、パチッ」、、、、、、。
そして周りに居たキャンパー達も、こぞって焚き火をし始めた。
暗い夜のキャンプ場、、、周りを深い森に囲まれたキャンプ場が焚き火の灯りによって照らされていく。 一度、この焚き火によって照らされたキャンプ場を、「空」から眺めてみたい。(笑)
「パチッ、パチッ、パチッ」、、、、、、。
焚き火を堪能していると、いろんな所から良い匂いがしてきた。 夜飯の時間かな。
「よしっ、俺もそろそろ”焼くか”」
今回は久しぶりの泊まりのキャンプと言う事で、奮発して買ったこの「カイノミステーキ!」。 これは絶対に美味しいはずだ、妻にはもちろんこのステーキを買ったことは言っていない。
「妻よ、安心しろ、”約一人前だ”。」
バックからフライパンを取り出し、煌々と燃える薪に直に載せて、少し温める。 そして、頃合いを見て、ゆっくりとステーキを載せていく。 ステーキの端が熱くなったフライパンに触れると
「ジュ〜!!」
そのままステーキ全体がフライパンに触れ
「ジューー!!」
ステーキの焼ける音が広がるとともに油が跳ねる。
「ジューー!!パチッパチッ!!」
これはもう、おいしいのは確定。 こんなお肉はもう滅多に食べられないので、記念に写真を撮っておくことに。
焼き面を変えると、かなり良い感じに焼けている。
多分、今までの人生の中でこんなにお肉を見つめていたのは初めてだと思う。 そして、良い感じに焼けてきたのでいよいよ食べることに。 もはや、生唾を飲みすぎてお腹がいっぱいになりそう。
一口食べる、おもむろに二口目も行く。
「おいしすぎて言葉が出ないとはこのことか、、、。」
今までグルメ番組に出ていたタレントのリアクションを見て、「大袈裟だなぁ〜!」と言っていた、自分を叱ってやりたい。
こんなにおいしいお肉を一人だけ食べてると、少し罪悪感が湧いてきた、、、。 給料が入ったら、妻にも食べさせてあげよう。
今日は、本当に贅沢な日だ。
ふと、空を見上げると「星」がたくさん。 さすがは山奥ってだけあるな、何回かここに来ているが、ここまで綺麗なのは初めてかも知れない。 それとも、おいしいものを食べて気持ちが高揚しているから、余計、綺麗に見えるのかも?(笑)
合掌。「ご馳走様でした。」
今からは、星を眺めながらゆっくりコーヒーでも飲もうかな、、、。
、、、。
男女二人:「あのぉ、すいませ〜ん」
俺:「え?、、、。あっ、はい」
すると、若い男女が俺に話しかけて来た。
俺のソロキャンプ『前編』
続く