ソライト

自然や旅、キャンプやアウトドアに関する事などについて、自分が感じたことや思った事などについて書いています。

【短編小説】 俺のソロキャンプ『後編』

キャンプ(今回は、下の記事の続きになります。)

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「※この話は、どこにでも居るごく普通の中年男性が、キャンプ中に若い男女と出会った話。(フィクションです。)」

 

【短編小説】 俺のソロキャンプ『後編』

・・・・・前回からの続き・・・・・

 キャンプ飯のステーキは申し分なく最高においしかった。

最高のキャンプ飯も堪能したので、この後はゆっくりとコーヒーを飲みながら、星を眺めようかなと考えている。

すると、、、。

男女二人:「あのぉ、すいませ〜ん」

年の頃は二十歳ぐらいか、若い男女が俺に話しかけてきた。

男性の方が「焚き火台」を持ち、少し困った様子で尋ねてきたので大体の予想はついたが、、、。

俺:「んっ、どうしました?」

男性:「いやっ、そのぉ、いざ焚き火をしようと思ったら「薪」を忘れてて、、、。火がないと料理も作れなくて少し困ってて、、、。」

これはもう、俺の火が着いている「薪」を分けて欲しいんだなぁと思って

俺:「あーっ! 良かったら焚き火分けるよー、全然使って!」

男女:「本当ですかぁ!? ありがとうございます!!」

俺自身、この男女と同じくらいの年齢になる息子と娘が居るので、素っ気無くもできず、喜んで焚き火を分けてあげた。 なんかいろいろ気になったので、少し話を聞いてみると、どうやらこの男女は「カップル」でまだ付き合って半年程。

今回は、彼の趣味でもあるキャンプをしに来たけど、彼自身キャンプをしたのは数回程度で、テントとかは比較的スムーズに立てたけど、火起こしが少し自信がなく、今回もうまくいくか半ば不安を抱えながらキャンプに挑んだ、そしていざ焚き火をしようと思ったら、火起こしの心配の前に、薪を忘れている事にこのとき気づいて困っていたと。

そしたらこのキャンプ場に何人か居るキャンパーの内、俺のところが一際、焚き火が明るく、焚き火も煌々と燃えていたので、もしかしたら火の着いた薪を分けてくれるかなぁと思い、俺に声をかけてきたらしい。

その話を聞いて、「俺にもそんな過去」があったなぁと思い出して、俄然ほっとけなくなった。

彼女の方は今回が初めてのキャンプだと言う事で、キャンプについては全くの素人、今回のキャンプもほとんど彼がしてくれてるとのことで任せっきりにしてたらしい。

そして俺は、燃えている薪をいくつか分けてあげた。
カップルはホッとした様子で、「ありがとうございます!」と言い、自分達のテントへ戻っていった。

嬉しそうに戻っていくカップルを見て、こちらまで嬉しくなるとと共に自分自身の過去を思い出していた。

 

・・・・・

 今から20年以上前の話しになるけど、ある日、今の妻(当時は彼女)とキャンプに行く事になった。 さっきのカップルと違うのは「俺と妻、2人ともが初めてのキャンプ」だと言う事。

けど、持ち前の器用さでテント設営や焚き火を着けるのは、なんとかうまくいった。 、、、だけど、料理を作る時に気づいた事があって、まさかの”フライパン”をはじめとする調理器具を持ってくるのをすっかり忘れていた。

しかもさっきまで晴れだったが突然の雨が降ってきて、ついていた焚き火が消える始末。 タープを張っていなかったので、焚き火の雨除けもできなかったのだ。

けど、通り雨だった様子で幸か否か、数分したら天気は回復した。 、、、が焚き火はサッパリと消えているし、キャンプギアは濡れているしで妻と共にガッカリしていた。

すると、その様子を見かねてか、少し離れている所に居た、おそらく「玄人キャンパーのおじさん」が、何も言わず、これを使えと言わんばかりに「薪」とフライパンをはじめとする「調理器具」を差し出してきた。

僕たち2人は呆気に取られながらも、コクリと一礼し受け取った。おじさんは去り際になんとも言えない哀愁のある笑顔を見せて自分のテントに戻って行った。

あまりのさり気なささと、そのおじさんのオーラに圧倒されて、しっかりとお礼が言えなかったので後からちゃんとお礼を言いに行く事にした。

そのおじさんが「薪と調理器具」を持って来てくれたおかげもあってその場はなんとか過ごせた。

そしてひと段落したので、お礼を言いに行こうと、そのおじさんの所に行ったが、夜も深まっていたためか、すでに眠っていた様子。

今、起こしてまでお礼を言うのも悪いなと思ったので、明日の朝になったらお礼を言おうと思い、僕たちもその日は眠る事にした。

そして朝になり、返しに行こうとおじさんの所に向かったが、その時にはそのおじさんは居なかった。

2人とも顔を合わせて、「ありゃりゃ」と言う感じに。 結局、調理器具を返しそびれた上に、ちゃんとお礼も言えず終い。 心残りがあったがそのおじさんの優しさが、今もなお俺の心の中にちゃんと残っていて、俺自身も「俺と妻」のように困っている人が居たら必ず助けようと心に決めていた。

・・・・・

 、、、そして、時が経った今日、俺もあの時のおじさんの年齢と同じくらいになった時に、さっきのカップルが、まるであの日の俺と妻に見えたのは言うまでもない。

そんな昔にあった懐かしい思い出に浸っていると、先ほどの男性が苦笑いを浮かべながら困った様子で、また俺のところに戻ってきた。

男性:「すみません、、、。やってしまいましたぁ、、、。」

俺:「どうしたの?、、、(まさか???)(笑)」

男性:「食材を焼いたりするための、鉄板とか網を忘れてましたぁ(笑)」

男性と俺:「!!!(笑笑)!!!」

もう、昔の俺を見ているようで、その時には他人と言う壁は同じキャンパーと言うこともあってか、なくなっていた。

俺:「あれ?彼女さんは?」

男性:「いやぁ、さすがに忘れたとは言えず、さっきチラッと見えた、その、、、”フライパン”を貸してくれないかなぁと思い、、、。」

少しこの子、図々しいかなぁ(笑)と思いつつも、実は今日、さっきの話に出てきたおじさんに、借りっぱなしになっていた調理器具の内の”フライパン”を持ってきていたのだ。

いつか返そうと思いつつ、たまに使ってはいたが、ちゃんと焼きなおしなどの手入れもしていたので、今でもちゃんと使えている。

おそらくもう30年物ぐらいだと思う。 それを貸して欲しいと言われたので、少し「うっ、、、。」っとなったが、もしあの時のおじさんだったら貸していたよなぁと思い、快く貸してあげた。

そうすると喜んでくれた男性が、「お礼と言ってはなんですが、僕が料理を作るので良かったら一緒に食べませんか?」と言ってきた。

少しゆっくりしたい気もあったが、こうゆうこともあまり無いだろうし、良い機会なので快諾した。

男性:「じゃあ、彼女を連れて、こっちに焚き火台や食材を持って来ますね。」

俺:「はいよ〜」

最近は「息子と娘」に会えていないので、実際に息子と娘に料理を作って貰うみたいで嬉しくなった。 焚き火台や食材を持って来た2人がやって来て、彼の方をよく見ると、何か年代物と言うか、普通では使われていなさそうな包丁などを持っていた。

少し気になりながらも、彼が全部用意してくれると言うので見ていると、着々と料理の準備を進めて行く彼の手捌きが見事だった。

俺の心の声:「なんか思ったのと違う!」

と思い、勝手にまた失敗とかしながら作るもんだと思っていたのに、段取りや食材の切り方がまぁ見事で驚いた!

俺:「なんか良い手捌きだけど、料理関係の仕事かなんかしているの?」

と、気になったので思わず聞いてみた。

男性:「あっ、ありがとうございます(照) 一応、「じいちゃん」の代から続いている普通の定食屋なんですけど、今は自分の親と切り盛りしているんです。」

俺:「あーなるほど! どおりで手際が良いわけだ!」

彼はどんどん作業を進めていく、手慣れた感じで野菜や肉を切っていき、そして貸してあげたフライパンを勢いよく振って野菜や肉を焼いていく。

俺:「しかし、彼女さんは料理ができる彼で嬉しいでしょう?」

女性:「はい、でも本当は私からも料理を作ってあげたいんですけど、彼の方が断然上手なので、料理も任せっきりなんです。(笑)」

男性:「いやでも今の時代、女性だけが料理をするのも違うと思いますし、その他の「家事」とかをしてくれてるし、何より僕がなんでも忘れっぽいので、その辺りのサポートを彼女がちゃんとしてくれているので、とても感謝しています。」

俺:「良いねぇ、なんか幸せを分けてもらっているみたいだよ。   、、、え? と言うかもう同棲かなんかしているの? まだ付き合って半年ぐらいでしょ?」

男性:「まぁ、つい最近からですけど。(照れ)」

最近の子達は早いんだなぁと感心していると、良い匂いがしてきた、どうやら料理が完成したようだ。

男性:「よしっ出来た。 簡単なもんですけど、食べてみてください。(笑)」

すると、定食屋ならではの「生姜焼き」が出てきた。

俺:「ははははっ(笑)まさかキャンプ場で生姜焼きを食べるとは思わなかったよ。」

でも、さすが定食屋の息子だけあっておいしい!

キャンプ場で食べる生姜焼きもいいもんだなぁと思い、俺のキャンプ飯のリストの一つに加わったのは言うまでもなかった。

男性:「でも、いつも使っている"フライパン"と同じ種類だったので、とても使いやすかったです。うちの定食屋もこのフライパンと同じ「タークのフライパン」なんですよ。確か創業当時、じいちゃんが使い始めたみたいでその頃からうちはタークのフライパンを使ってて、、、。」

俺の心の声:「、、、もしかして、このフライパン、彼のおじいさん、、、。あの時のおじいさんの??? 、、、なぁぁぁわけないか!!!」

、、、ガヤガヤッ、、、ガヤガヤ

その後も、「俺と若いカップル」の楽しい夜、彼の作る料理をつまみにお酒を飲んだりと、楽しいキャンプの夜は続いた、、、。

楽しく、食べたり飲んだりしているうちに、夜も深まって来て周りのキャンパーさん達も寝る準備をし始めたので、そろそろ終わることにした。

俺:「じゃあ、そろそろお開きにしようか。」

男性:「あっ、もうこんな時間か、そうですね、そろそろ、、、。今日は本当にありがとうございました。」

男性:「フライパンは、朝に洗ってから返しますね!」

そう言われて、俺はふと思った。

俺の心の声:「このまま持って帰ってもいいんだけど、この際この子が良ければ、このフライパンを譲ってみようかな? もうきっと、返すチャンスも訪れないだろうし、さっきの話しにチラッと出た彼の「じいちゃん」の事も気になるし、、、。」

と、少し言いにくいが彼に聞いてみた。

俺:「あの、良かったらそのフライパンを君が使い続けない?、、、良かったら譲り受けてくれる?」

男性:「え? いや要らないです!!! フライパンなら、家にいっぱいあるし、、、。」

俺:「、、、、。」

俺:「、、、あ、ああぁ! そうだよね! 貰ったところでだよね。(笑)」

男女:「じゃあ今日は本当にありがとうございました!」

俺:「あ、うん、それじゃあ、、、俺も久々に若い子と会話が出来て楽しかったよ。 それじゃ、おやすみなさい、、、。」

自分達のテントに戻って行くカップルを見て、かなり恥ずかしくなった。

とりあえず、眠れるか分からないが、寝袋に入って寝る態勢になり蚊帳のテント内から見える星空を、色んな気持ちが錯綜する中、ずーっと眺めていた。

キャンプ場、もとい自然の中では、虫の鳴き声や自然が織りなす「環境音」が聞こえてきてとても気持ち良い。 そうしていると、いつの間にか寝ていたようで、起きた時にはすでに朝になっていた。

木々の間から差し込む太陽の光、「チュンチュン」とキャンプ場に広がる鳥のさえずり、とても気持ちの良い朝。昨夜は遅くまで起きていたので、今朝は少し遅く起きてしまった。

ふと、目を横に向けると昨夜、料理に使った「フライパン」が置いてあった。 フライパンはきれいに洗っており、さすがは定食屋という感じ。

フライパンを手に取ると、下に置き手紙があった。

置き手紙:「昨夜はありがとうございました。おかげで助かりましたし、楽しい夜を過ごせました。 今朝、用事があるのを思い出したので、(また忘れてました(笑))早めにキャンプ場を出ることにしました。 お礼を言おうと思ったのですが、気持ち良さそうに寝ていたので、無理に起こしたら可哀想だなぁと思い、置き手紙を書かせてもらいました。 もしあれだったら家の定食屋の「店の名前」とその「住所」を下に書いてあるので、良かったらいつでも来て下さい。 その時は無料でご馳走させていただきます。今回は本当にありがとうございました。」

丁寧に書いてあるのを見て、「こちらこそありがとう、、、。」と思いながら、店の住所を見たら、どうやら町外れにあるお店みたいで、自分の住んでる地域からは少し離れている所にある様子。

少し遠いが、近いうちに行こうかな、などと考えているとキャンプ場に1組また1組と新たにキャンプをしに来る人達が来はじめた。

と共に、キャンプ場を後にする人達もいて、新たな人達によるキャンプ時間が始まっていくのを感じながら、朝食とコーヒーを済ませ、俺もキャンプ場を後にした。

キャンプ場の帰り、車の中でふと昨夜のカップルのことを思い出していると、そこから自分の息子や娘のことを思い出していた。 最近は連絡もないし、こっちから連絡をするのは少しくすぶっていたが、思い切って掛けてみようかなと思った。

でも、俺から掛けるのは変に思われるかもしれないから、妻に掛けてもらおうと、、、。

今回のキャンプで、いろんなことを感じ、考えさせられた、やっぱりキャンプは良いな。 キャンプは、キャンプや自然を楽しむのはもちろん、人との出会い、そこから生まれる物語りを経験させてくれる。

また、来週もキャンプに行こう、その時は妻も連れていくか、、、。 いっそのこと子供達も連れて行きたいが、それは少し難しい話しだな、、、。

次のキャンプで食べるキャンプ飯や使うギアのことなどを考えながら、今回のキャンプも終わった、、、。

【短編小説】 俺のソロキャンプ『後編』

終わり

【短編小説】俺のソロキャンプ『前編』

 

キャンプ

 

 「※この話は、どこにでも居るごく普通の中年男性の「キャンプ」の話。(フィクションです。)」

 

 

【短編小説】俺のソロキャンプ『前編』

 

 50歳を過ぎて子供も自立してから、ファミリーキャンプではなく、ソロキャンプをする事が多くなった俺。

 

今週は土曜と日曜日が休みなので、今回は久々の泊まりのキャンプに来ている。

 

場所は、一年程前にソロキャンプを始めた頃から来始めている、山奥のキャンプ場。

 

俺は「春夏秋冬」それぞれの季節で、このキャンプ場を経験していて、キャンプ場周辺の見所などをそれなりに把握している。

 

それにしても仕事か年齢か最近は少し疲れ気味で、今日は朝10時からキャンプ場に来ているが、テントやら何やらをある程度設営し終わったら、いつの間にか寝てしまっていた。

 

起きた時にはもう昼過ぎ、とりあえず昼食をと思いカップラーメンを食べて、昼食後は読書をしたりキャンプ場の付近を散策したりした。そうこうしているうちにいつの間にか夕方になってた。

 

最近一日の時間がとても短く感じる、、、でも本当のキャンプの時間は「ここから(夜)」だと、俺は思っている。

 

このキャンプ場は、今では珍しく「直火OK」のキャンプ場だが、今回は新しく買っていた「ピコグリル」の焚き火台を使うと決めている。

 

「ムフフッ、、、。」

 

妻に内緒にしていた「ヘソクリ」で買った。 

 

1万4000円はしたが(たけぇぇ)、最近YouTubeSNSでよく見ていて、つい欲しくなり買ってしまった。

 

今日はこの焚き火台で、焚き火を堪能した後は「ステーキ」を喰らうと決めている。

「おっと、よだれが、、、。」

 

ステーキと言えば、昼間に声を掛けた青年が、帰り際に声を掛けてくれて、「今日の夜のキャンプ飯はなんですか?」と聞かれたので、

「今日は「ステーキ」だよ。」と言ったら、青年が羨ましそうな顔をしてたのを思い出した。

 

そう言えば、あの青年が使っているタープが、自分が欲しいと思っていたタープだった。 確かあれは「DD hammocks」のタープだったような?

 

俺自身、年齢が50歳を過ぎた辺りから少し渋い感じのギアが欲しくなってきている。 今使っている、タープやテントは蛍光色の緑色とか黄色が入っているものだし、そこまで派手ではないけど、やっぱり年相応のが良いし、そもそもほつれとかスリ傷みたいなのとかも増えてきたので、そろそろ買い替えたい頃。 

 

ついでに、同じくDD hammocksから出ている「ピラミッドテント」も良いな。 でも、今月はもうお小遣いもヘソクリもあんまりないから諦めるしかない。

「来月にでも買おうかな?、、、。」

 


「リーン、リーン、リーン、、、。」

 

辺りも暗くなって来て、少しずつ鈴虫やコオロギの鳴き声が目立つようになって来た。 そしてこの時間帯になって来て、より楽しめる事が、、、。

 

そう「焚き火Time」。

 

新しく買った、ピコグリルを組み立てる。

「カチャン、ガチャ、ガチャ」、、、。金属音の当たる音が夜のキャンプ場に響く。 今はまだ新品だが、いずれ、このピコグリルの使い込んできた感が出るのも楽しみのひとつだ。

 

「薪」はキャンプ場に落ちている木の枝などを拾う事もできたけど、自然の物は湿気が残っていて「煙」が出やすいので、事前に比較的乾燥している、ホームセンターの薪を買っておいた。

 

薪の種類は「針葉樹」か「広葉樹」で少し悩んだが、焚き火を長い時間楽しみたいので、今回は広葉樹にした。

 

そして、ピコグリルに薪をくべていく。 パッと見、ピコグリルは足も細くて安定性がなさそうだが、意外にいけそうだ。

 

すると予想はしていたが、薪が少し大きかったようで、少々はみ出している。 そう言えば、ピコグリルを使っている人の写真や動画を見ると、たまにはみ出しているのを見たな。(笑)

 

それはいいとして、さっそく火をつける事に。 今回はシンプルに「マッチ」でつける。 薪に火をつける時のコツとしては、薪をくべる時に例えば「新聞紙→細い木の枝→中くらいの木の枝」と徐々に燃えやすいものから、薪を大きくしていくと良い、、、とYouTubeで知った。「YouTube様々。」

 

マッチを擦り、ほぐした麻紐に火をつける。

 

小さく細い木の枝から徐々に燃えていく、火力が増していくとともに、広葉樹の薪も徐々に燃えていく。

 

そして、暗い夜のキャンプ場のひと隅が焚き火で明るくなっていく。

 

不規則に揺れる「焚き火」、、、。

 

焚き火の灯りに照らされる、テントや周辺の木、、、。

 

この感じ、この時間が大好きだ。

 

この心が落ち着く感じがなんとも言えない。

いっときの癒しの時間を堪能する。 

 

「パチッ、パチッ」、、、、、、。

 


そして周りに居たキャンパー達も、こぞって焚き火をし始めた。

暗い夜のキャンプ場、、、周りを深い森に囲まれたキャンプ場が焚き火の灯りによって照らされていく。 一度、この焚き火によって照らされたキャンプ場を、「空」から眺めてみたい。(笑)

 

「パチッ、パチッ、パチッ」、、、、、、。


焚き火を堪能していると、いろんな所から良い匂いがしてきた。 夜飯の時間かな。

「よしっ、俺もそろそろ”焼くか”」

 

今回は久しぶりの泊まりのキャンプと言う事で、奮発して買ったこの「カイノミステーキ!」。 これは絶対に美味しいはずだ、妻にはもちろんこのステーキを買ったことは言っていない。

 

「妻よ、安心しろ、”約一人前だ”。」

 

バックからフライパンを取り出し、煌々と燃える薪に直に載せて、少し温める。 そして、頃合いを見て、ゆっくりとステーキを載せていく。 ステーキの端が熱くなったフライパンに触れると

「ジュ〜!!」

そのままステーキ全体がフライパンに触れ

「ジューー!!」

ステーキの焼ける音が広がるとともに油が跳ねる。

「ジューー!!パチッパチッ!!」

 

これはもう、おいしいのは確定。 こんなお肉はもう滅多に食べられないので、記念に写真を撮っておくことに。

 

焼き面を変えると、かなり良い感じに焼けている。

多分、今までの人生の中でこんなにお肉を見つめていたのは初めてだと思う。 そして、良い感じに焼けてきたのでいよいよ食べることに。 もはや、生唾を飲みすぎてお腹がいっぱいになりそう。

 

一口食べる、おもむろに二口目も行く。

「おいしすぎて言葉が出ないとはこのことか、、、。」

今までグルメ番組に出ていたタレントのリアクションを見て、「大袈裟だなぁ〜!」と言っていた、自分を叱ってやりたい。

 

こんなにおいしいお肉を一人だけ食べてると、少し罪悪感が湧いてきた、、、。 給料が入ったら、妻にも食べさせてあげよう。

 

今日は、本当に贅沢な日だ。

 

ふと、空を見上げると「星」がたくさん。 さすがは山奥ってだけあるな、何回かここに来ているが、ここまで綺麗なのは初めてかも知れない。 それとも、おいしいものを食べて気持ちが高揚しているから、余計、綺麗に見えるのかも?(笑)

 

合掌。「ご馳走様でした。」

今からは、星を眺めながらゆっくりコーヒーでも飲もうかな、、、。

 

、、、。

 

男女二人:「あのぉ、すいませ〜ん」

 

俺:「え?、、、。あっ、はい」

 

すると、若い男女が俺に話しかけて来た。

 

俺のソロキャンプ『前編』

続く

【日記】 電波の入らないキャンプ場での出来事。 その「内容と反省点」

山奥のキャンプ場でのキャンプの様子

 

 先日、久しぶりのキャンプに行って来て、まぁそれなりに楽しかったんですけど、(キャンプの様子はまた別記事で書けたら書きたいと思います。) キャンプ中に「ある事」が起きたので、今日はその話を日記的にですが紹介したいと思います。

 

まず最初にその「キャンプ場の詳細」「何が起きたのか」をホント簡単に書いておくと。

 

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【キャンプ場の詳細】

そのキャンプ場は「管理人のいない、無料キャンプ場」という事と「電波が入らないキャンプ場」。 さらには「電波が入る所は来た道を、車で10分前後、戻った所。」であるという事。(戻る道は所々「ガタガタ道」がある。)

 

【何が起きたのか】

キャンプに来ている、親子三人(お父さん、お母さん、娘さん)が居て、そのお母さんと娘さんが、少し岩場がある川の近くに行っていたところ、そのお母さんが足を踏み外したのか、その「川の辺りでケガをした」らしく、娘さんが慌ててテントまで戻りお父さんに伝えた後、「僕の所に来て、救急車を呼んで欲しいとの事で、僕は了解して、電波の入る所まで行き119番をし救急車を呼んだ」。 結果的には、ケガはしていたが命に別状はなかった。

ーーーーー

 

ざっくりと書きましたが、先に僕が共有しておきたいなと思ったことを書いておくと、「携帯の電波が入らない場所で他の誰かがケガ等をした時の対処法はどうしたら良いのかを常日頃から考えておいた方が良い。」ということです。

 

ここから、もう少しその時の様子などを具体的に書きます。 これを呼んでいる読者さん(自分)だったらどういう対応をしたかな? 、、、と考えて頂けると良いのかなと思います。

 

 まず、僕は昼寝をしていて目が覚めたので、寝ぼけまなこで使わないギアを片付けていたところ、娘さんが慌てた様子で僕のところに来て、僕に「母が川の所でケガをしたので、救急車を呼んできて下さい!」と言われました。

 

確かに、その川の近くには少し岩場があって、もしかしたら足を踏み外して岩にぶつかったのかなぁ?と思い、僕は、少し眠い感じのまま、すぐに了解して車に乗り、電波の入る場所まで行こうとしました。 だけど、その「お母さんの容態を聞くの忘れていた」ので、車を降りてその親子を少し探したんですが居なかったので、探している時間が勿体ないなと思い、電波の入る所まで大急ぎで車を走らせました。

 

そして、10分前後車を走らせたら、僅かに電波が入ったので119番をしました。 でそこから15分程経ってまずは消防車が来たので、ぼくの誘導でその電波の入らないキャンプ場まで、また10分前後かけて戻りました。戻った後、5分ぐらいして救急車が来ました。

この間の合わせた時間はおよそ「30分〜40分」程。

 

で、現場で救急隊員が応急処置をして病院に行ったんですけど、その病院までは多分20分程はかかったんではないのかなと思います。

 

で、僕の憶測ですが、ケガをしてから病院に行くまで、「1時間程は掛かった」と思います。

 

とまぁ、これが電波の入らないキャンプ場で起こったことなんです。

 

結果は大丈夫だったんですが、ここで僕が反省しなきゃいけないなと思ったのは、「『そのお母さんの容態しっかりと確認しておく』という事を怠っていた。」と言うこと。

 

まぁ言い訳をすると、半分眠っていたような感じだったので、一度その事に気づいて聞きに行こうと思ったんですが結局探せずで、とりあえず119番しないといけないなと思い電波の入る所まで行きました。

 

なので、最初に「救急車を呼んでください」と言われた時点で、娘さんに「容態」確認するか、それか、自分の目で見て「容態」を確認しておく。 、、、をしておくべきだなと思いました。

 

容態を聞いていなかったので、救急隊員に「容態の詳細」をうまく伝える事が出来ませんでした。

 

なので、容態によっては、一刻も争う場合がなきにしもあらずなので、到着した時にスムーズに対応できるように「ケガをした人の容態は聞いておく確認しておく」ことはすごく大事だなと思いました。

 

それとですが、これはその「ケガをした人の容態にもよる」んですが、何せ「電波が入らない場所」なので、一刻を争うような容態であった場合にとりあえず「電波の入る所までケガをした人を移動」させておいた方が良いのかなと思いました。

 

ホントにこれは、「その人を動かさない方が良い場合もある」ので、なんとも言えないですが、例えば「意識が無い」「脈が無い」「出血等がヒドイ」場合などは、電波の入る所まで移動させて、そこで119番をして、救急隊員の指示に従う、、、。

 

と、言ったように、やっぱり、しっかりと容態は確認して、そこから臨機応変に対応すことが大事、さらに言えばそう言う不測の事態にも対応できるように常日頃から意識しておく、学んでおくことが大事だなと思いました。

 

正直言えば、まさかこう言うことが起きるとは思っていませんでしたし、自分自身の事ならまだしも、他の人の事となると瞬時に対応策を考える事が出来ずにいた自分がいました。

 

なので、繰り返しになりますが、「『携帯の電波が入らない場所』で他の誰かがケガ等をした時の対処法はどうしたら良いのかを、常日頃から考えておいた方が良い。」という事は強く思いました。

 

あと勿論、ケガをした人が自分自身であったり、または男性か女性か、お爺ちゃんかお婆ちゃんか、などでもその時の対応は変わってくると思うので、完璧に対応は出来ないかもしれませんが、こういうことが起きるかも知れないという気持ちを持っておいた方が、実際に起きた時に何も考えていない時よりかは、幾分かは冷静に対応出来るんではないのかなと思いました。

 

この出来事が自分自身に起きた事だと思って、自分なりに考えて貰えたら良いのかなと思います。

 

最後まで読んで頂きありがとうございました。

「映画えんとつ町のプペル」と「今年公開予定の楽しみな映画2つ」

 

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 さっそくですが、去年の12月25日に公開した「映画 えんとつ町のプペル」は皆さん見ましたか?

公開から約1ヶ月が経った今、TwitterなどのSNSではかなり話題になっています。

かくゆう僕も、すでに4回は見に行ってます。Twitterとかではプペルを見に行った回数のことを「◯プペ」とも言うらしくて、なかなか良い盛り上がりを見せてくれてますね。

そして、「日本アカデミー賞も受賞」して、さらなる盛り上がりが期待されます。(おめでとうございます!)

サロンメンバーの一人としてプペルが盛り上がっているのは非常にうれしいことで、それによって僕自身も、もっと良いコンテンツを作ろうと、より頑張れます。(「西野さん及び関係スタッフさん」「STUDIO4°Cさん」最高です!あの「鉄コン筋クリート」も手掛けているとは知りませんでした!)

そして今回、プペルの映画内容は色んなところで評価されているので、この記事ではそう言ったプペルのここが良いとかは書きませんが、今回は純粋に感謝しますと言うか、映画を映画館で見る事の楽しさを教えてくれた事に感謝したいと言うか、、、。

前回書いた記事で、僕は「20年振りに映画を映画館で見る」と言ったんですが、ホントそれまでは家のテレビで映画を見るのが普通というか、あまり「映画館」で見るという発想が浮かばなかったんですね。

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でも、西野さんのサロンに入って、「映画えんとつ町のプペル」と言うものが身近になり、そしてサロンに投稿される記事や色んなところで発信されている話を聞き、「映画館」というのもがかなり身近になったんですね。

映画館の大きい「スクリーン」で映画を見ることの楽しさ、映画館の大きい「音」で映画を体感することの楽しさ、これは紛れも無く『映画館』でしか体験できないことだなと感じたんです。

それを教えてくれた事にはもうホントに感謝したいんですけど、なんでそこまで感謝したいのかと言うと、タイトルに書いている「今年公開予定の楽しみな映画2つ」に繋がるんですが、その2つと言うのが、、、。

ゴジラVSコング

ワイルドスピード ジェットブレイク

の2つの作品。 もうタイトルで、ぜったい映画館で見た方が良いやつだなと思いました。

それも、映画 えんとつ町のプペルを見た事で「知った」「分かった」、映画館で見る映画の「迫力感」を、この2つの映画でも是非体感してみたいなと思いました。

ゴジラなんてぜったいに「音」の迫力は凄いだろうし、ワイスピの「カーアクション」は映画館の大きいスクリーンだと余計に凄いだろうし。

これも映画館の良さを教えてくれた、「映画 えんとつ町のプペル」のおかげなんです。

正直に言えば、プペルを「4回」見に行ったと言いましたが、2回目以降の鑑賞は9割はプペルを楽しみにした鑑賞ですが(西野さんの副音声も面白かった)、もう1割は上記2つを含めた、これから見るであろう映画作品を、「どの映画館」「どの場所」、つまりその映画館のスクリーンの解像度や音の迫力などの「特徴を知る」為でもあったんです。

別に言う必要は無かったと思いますが、やっぱり映画は公開されて間もない頃に見た方が良いなと言うことを「共有」したくて書きました。

と言うのも、公開初日は基本的にその映画館の一番大きな場所(スクリーンや客席数や音が一番)で見れるんですね。

でも日にちが経つにつれ、次の新作映画も放映されるので、先に公開した映画は基本的に「場所」の規模は小さくなり、それに伴って迫力も小さくなるんです。 (地元の宮崎県は特に)

それは、4回とも別の場所で見た事によって分かったことであって、つまりはプペルが面白いから、映画館に足を運ぶ最大の理由が生まれ、尚且つ、その理由によって、次に見るであろう映画をどの映画館で見れば最大限に楽しめれるかと言う事を教えてくれた。

なんか話がゴチャゴチャして来たので、今回の記事の内容をまとめると、、、。

「映画 えんとつ町のプペル」が面白くて、「映画を映画館で見ることの楽しさ」を知れた。そして期待の新作映画を映画館で見たいと言う「欲」が生まれた(楽しみが増えた)。

それもこれも、「映画 えんとつ町のプペル」のおかげと言うことです。

ちなみに宮崎県で迫力のある映画を見たい、体感したいなら、僕の感覚知ですが「セントラルシネマ宮崎のシネマ1(401席)」がおすすめです(初日公開〜公開後約1週間が大体がシネマ1での放映だと思うので公開されたら早めに行った方が良いのかなと思います)。

まだまだ大変な日々が続きますが、早くこの状況が収束するのを願うばかりです。

悩みなどがあれば、短かな人などに相談したり話を聞いてもらうだけでも気持ちが晴れると言うこともあるので、深く考えすぎないようにする事も大事なのかなと思います。お互いに頑張りましょう。

山頂で飲むコーヒー「短編小説」

登山道にある展望台でベンチに座っている様子

 

僕の名前はアキラ、歳は31歳。

 時刻は朝の6時、家の近くにある木に小鳥が止まりチュンチュンと鳴いている。

僕にしては珍しく今日は早起きをした。   それもそのはずで、今日は高校生の時以来していなかった「登山」をすると決めていた。  登る山は低山で登山道もしっかりと整備されているらしく、比較的簡単に登れるらしい。

今日の為に、2週間程前からバッグや登山用のシューズを買ったりと色んな物の準備をしていた。

ちなみに今回、言ったら成人になって初の登山では、ある計画を立てている。それは

「山頂でコーヒーを飲む!」

と言う至ってシンプルな計画。だけど有意義な時間になることは間違いないと見ている。(笑)

と言うのも、僕の趣味というか好きな事の一つとして、「コーヒー」がある。

コーヒーを飲むのはもちろん好きで、しかも豆を挽くところから作るというハマりっぷり。 別にこれと言って、この豆について詳しいとか道具について知っている訳では無いんだけど、なんでも形から入るのが僕の性格で、今ではいろんな所から出されている豆や道具を使ったりして、自分に一番合ったものを探している。

そして今回、コーヒー道具も登山用にコンパクトにしないといけないなぁと思ったので、新しくコーヒーミルやポットなども買った。

そして必要な道具をバッグに詰め込み車に載せて、いざ出発。

季節は夏で今日は快晴、まさにアウトドア日和と言ったところ。 登山道までの約1時間程度の道のりは家から街中を通り、次第に山の景色が広がってくる感じの道を行く。

車の中、時刻は7時過ぎ、普段はこの時間帯に車に乗ることがないので、街の様子は通勤時間もあってか少し騒がしい。 信号が赤に変わり車を停車して周りを見ると、他の車の人の顔が少し浮かない顔をしている様子、僕だけが少し浮かれている感じになって、変に浮いていた、、、。

ん? この感じは僕が通勤している土曜、日曜の雰囲気と真逆の感じになっている?
僕は基本的に土曜、日曜を含んでの仕事なのでその日は少し憂鬱、9時ごろ通勤途中で周りの車を見ると楽しそうな家族やカップルをよく見る。

なるほどなぁと、普段は楽しそうにしている人達も仕事の日、特にこの通勤時間は僕と同じような感じだったんだなぁと思い、変に他人のことを短に感じてしまっていた。

この感じが世の中から無くなって、みんなが笑顔あふれる感じになると良いのになぁと、ふと思う。

ということがありつつ、車を走らせていると景色が緑色に染まった山に変わって来た。アウトドア感溢れる景色にさらに気持ちが高揚していく。

そして登山道入り口と思われる前の駐車場に着いた。

周りを見ると、さすが平日と言ったところ、数台しか車が止まっていない。これから堪能する自然をほぼ貸し切りと言った状態だ。

車を停め、登山用のシューズに履き替えてから、バッグを背負い、いざ出発する。 かすかにバッグの中でコーヒーを作る為のセットがお互いに当たっているのか、「カチャ、カチャ」と言う音がする。 この音もまた良い感じの音に聞こえてくる。(笑)

そして生い茂る木の中にちょっとした道筋が見える、おそらくそこが登山道だなぁと思い近づいて行くと、長さはおよそ100センチと言ったところか、木の枝が数本まとめて置いてあった。 その木の枝が置いてある上の方を見ると

「ご自由にお使いください」との文字が。

瞬時に「あぁ!登山の時に歩きやすくとか、体を支えるのに使う棒か!」と思って、結局は棒は使わないんだが、その誰かが誰かの為にしてくれている事の優しさに僕の心が支えられた気がして、穏やかな気持ちになった。

そして、アスファルトの地面から土へと変わる登山道の地面に足を踏み入れる。

一歩、また一歩と足を進めて行くごとにより感じる、土の地面の柔らかさと言うか、アスファルトの足に直に来る反発感がほとんど無くて、心地良い。

まさに自然と言う大地を歩いていると言う感じがこの上なくたまらない。

そして数メートル歩いてふと顔を上げるとそこには、木々が生い茂るなんとも幻想的な風景が広がっていた。

いつもはコンクリートジャングルに囲まれて生活しているが、ここは緑がいっぱいで鳥やセミの鳴き声の大合唱が繰り広げられている大自然の場所だった。

気のせいか、吸ってる空気もいつもより美味しく感じられる。

家から小一時間のところに、こんなに良い場所があったのかと今まで気付かなかったことに、僕は少し後悔すら覚えた。

とりあえず、歩みを進めることに季節は夏なので、多少暑いが木々が良い日陰になってくれているので幾分か涼しい。

そしてただひたすら、前を見て歩みを進める。

すると、今までは緩やかな道が続いていたが、ここから急な上りになった。

「うわぁ、キタァ、、、。」

と思わず言葉が漏れた。 正直ここまでスイスイとこれたけど、いつかキツイ上りが来るんだろうなぁと思っていて、実際に目の当たりにするとおもわず足が止まった。

でも、もちろん引き返す事などはせずに気を引き締めて、足を上げ、一歩また一歩と急な上りを進んで行く。

登るにつれ、少しずつ身体が火照ってきて、じんわり汗もかいてきた。

ひたすら登る、一歩また一歩と。
「はぁ、はぁ」少し息も切れて来た。急な上りを歩き始めて8分ほど、登山道入り口から合わせたら約20分は経ったか?

急な上りもようやく終わり、また緩やかな上りに変わった、と同時に少し開けた場所に出た。 さっきまでは木々が生い茂っていてそこまで青空は見えなかったが、ここに来て急に天に広がる青空と眼下に広がる緑と遠くに見える街が見えて来た。

急な上りの直後で疲れもあってか、その壮大な景色に、より感動を覚えた。

もうなんだか、ここで山頂に到着した気分になった、、、が、まだ道のりは続く。 けどひとまずは、ここで少し休憩をと思いバッグの横に入れている水筒を手に取って、グビグビ飲んだ。 口から入ったスポーツ飲料水が乾いた口に潤いを生み、そして喉から胃に入っていく感じが分かった。

「あ!そういえば今日、朝飯を食べていなかったんだ。」

飲んだ後、胃の中で僅かに飲料水の冷たさを感じたので、ご飯を食べていない事を思い出した。 一応、朝におにぎりを握ったので持って来てはいるんだけど、「ここで食べるのはまだ早いよなぁ」とかそんな事を考えながらしばしの休憩を取っていた。

すると、上から歳の頃はおよそ60〜70歳の夫婦が下りて来た。 シューズやバッグ、服装がいかにもと言った感じで軽快に下りて来て、「こんにちは〜」と軽いあいさつを交わした。

僕は「ほぇ〜、元気だなぁ」と思い、僕もまだまだ負けてられないなと、何と勝負しているのか分からないが、バッグを背負ってふたたび歩みを進めた。

少し開けていた場所からまた、木々が茂った景色の中に入って行く。

それにしても歩いている途中で、度々現れる「山頂まで、あと〇〇メートル」と言う看板だが、これは優しさで立てているのか、何なのか正直分からないんだけど、確実に言える事は僕にはこの「山頂まで、あと〇〇メートル」と言う文字が苦痛でしかない。(笑)

この看板を見る度に、「え!? まだこんだけしか進んでいないの!?」と言う感じになって、少し落ち込む。(笑)

けど、めげずに更に歩みを進める、アップダウンを何回か繰り返し、また急な上りも出てくる。 普段運動をしないのでけっこう足にくるなぁ。

そしてまた例の看板が、、、。

「まただぁ」と思ったが一応看板を見ると、その悪魔の看板も少し優しさを覚えてくれたのか「山頂まで、あと100メートル」という文字が。

そこまでは確かに疲れていたが、あと100メートルという文字を見て、元気が出たのか少し足が軽くなった気がした。

そこで僕は気付かされた、この「山頂まで、あと〇〇メートル」という看板は、最初の内はわざと「山頂まで、”あと2キロメートル”」とか言って、山頂まで行く事の厳しさ、道のりの長さを登山者に知らしめておいて、けどその言葉にめげずに頑張った登山者には”あと100メートル”とか言って、ちゃんと頑張りを褒めて挙げている、、、。

「ん?僕は何を言っているんだ?」

とりあえず、妄想を見ないで現実を見ることにし、先に進んだ。

いや、ホントそうで「あと100メートル」なんて優しさはただの妄想!
歩いても歩いても中々、山頂に着かない。
100メートルがこんなに長く感じた事は無い!

最初は軽く感じていた、バッグもここに来て重く感じて来た。

汗がひたいを垂れ、「ゼェ、ゼェ」と息も切れている。ここまで登って来ると、夏だなぁと感じていた、セミの鳴き声も少なくなってきて、数匹の鳥の鳴き声が響くだけ、風も無いので木々が揺れ動く音もしない、そこには息を吸っては吐く自分の呼吸音と、かすかに聞こえるドクン、ドクンと言う心臓の音、なんか久々に無我夢中になって歩いている自分と向き合っている感じがした。

一歩、、、また一歩、、、。

着実に山頂に近づいている、そう自分に言い聞かせ歩いて行く。普段の仕事はただ任された事を淡々とこなす作業で特に難しこともしない。 でも今日の僕は、誰かに任された事をしている訳では無く、自らの意思でしようと思った事に真っ正面から向き合っている。

「僕は今頑張っている!」

そう思いながら、頑張って残りの道のりを歩いていると、後ろからさっそうと登って来る、おそらく僕のお爺ちゃんと同じくらいであろう、お爺さんがあっという間に僕を抜かして行った、、、。

お爺さんは、すれ違い様に全然疲れた様子も見せず、笑顔で「お!? こんにちは!珍しく、若い登山者だなぁ、頑張れ!」と言って、どんどん進んで行った。

そのお爺さんの感じを見て、「僕の頑張りって一体、、、。」と思わされた。(笑)

すっかり落ち込んだ感じになって下を向いていたが、ふと顔を上げるとそこには「山頂に到着です。お疲れ様でした。」と書いた看板があった。

正直メチャメチャ嬉しかったが、ここまで約1時間半ほど歩いて来て、さすがに疲れもあって素直に「やったー!到着ー!」といった感じにはならなかった。

でも、どんな景色が見れるんだろうと、少しワクワクしながら進むと、

、、、ん? けっこう木が伸びていて何も見・え・な・い?、、、。

すると、さっき僕を抜かして行った、お爺さんが「もうここは、ずいぶん前からこんな感じだよ! 今ではトレーニングがてらこの近くに住んでいる「おじぃ、おばぁ」が、登りに来るくらいだよ」と、、、。

それを聞いて僕は、「あぁ、だからさっき ”珍しく、若い登山者だなぁ” 」って言ったんだなぁと分かった。 そんなことを言ったお爺さんは、到着したばかりなのにもう下山を始めた、「じゃあねぇ〜」と言い残し。

一人取り残された僕はもう一度あたりを見渡した。 山頂から見える景色は、伸びきった木が360度囲んでいてその真上に広がる青い空のみ、、、。 絶景だと思っていた景色は見れなかった、、、。

だけど何だろう、決して景色は良くないが、ここまで頑張って登って来て、到着した時の嬉しさや、さらに言えば登っている時に自分と向き合ったことは、最近ではしてこなかったことで、そこに関してはものすごく充実感を味わえた。

、、、と、ここでなんか終わりな感じもしてきているが、今回の1番の目的は「山頂でコーヒーを飲む」と言うこと、、、。

「チュン、チュン(鳥の鳴き声)」、、、。

すっかり背中の汗で濡れたバッグを下ろし、ちょうどベンチがあったのでそこに座ることにした。 さっき食べようか迷っていたおにぎりを出し、包んでいるラップをはがして、おもむろに一口ほおばった。

「美味い!」

二口目もすかさずいく。 すると、具として入れていたサケフレークに到達するんだが、これがまた美味しい!

あまりにも美味しくて、2つおにぎりを持って来ていたんだがあっという間に食べ終わってしまった。 で、ここで分かったことが一つある、おにぎりにはスポーツ飲料水はあまり合わない、やっぱりお茶が合う、、、と。

時刻は10〜11時ごろ、木々によって隠れていた太陽も、だいぶ上がって来て山頂に光をもたらす。 日陰で少し涼しかった山頂も、より夏の暑さを感じる様になってきた。

「よしっ、コーヒー作るか!」

僕はこの日の為に新たに買っておいた、ミルとポットとアルコールストーブを出した。 新しい物とはいえ、今までこういった道具をたくさん使って来たので使い方には苦戦せずなんなくとアルコールストーブにも火を付けることができた。

そしてポットに水を入れストーブに載せる、沸くまでしばし待つことに、、、。

アルコールストーブの決して勢いのある火の出方では無い感じ、ゆらゆらと揺れる火の感じが良い。

自然の中は本当に静かで、いつものコンクリートジャングルのいろんな音が混じりあった生活圏とは大違い。 、、、でもたまに飛行機が頭上を通っていく音がして、その時だけ現実の戻される。

僕は、飛行機に対して、「せっかく良い気分になっているんだからそのままにさせてくれよ」と、少し怒りそうになったがそんな事を考えていると、グツグツとお湯が沸いてフタもカタカタとなっている、まるでポットも怒っているかの様だった。(笑)

いやぁ僕も小さい男だなぁと思い、心を改める様にミルの中にコーヒー豆を入れて挽いた。

ガリガリガリガリ」 静かな山頂で豆を挽く音が響く。

ガリガリガリガリ」ひたすら挽く。

「チュンチュン、ピー!ピー!」、、、と豆を挽く音に反応したのか鳥が鳴いている。

そしてドリッパーに紙フィルターをセットして、挽いた豆を入れる。 ちなみに僕は「中煎りのコロンビア豆の中細挽き」が好みだ。

、、、と、準備をしている内にお湯もちょうど良いくらいの温度になった。

そしてここからが集中するところ、まずは一気にお湯を入れず挽いた豆を蒸らす為に、少しだけお湯を入れる。

泡が立ち膨らむ、、、。 そして20〜30秒蒸らしたら、3〜4回に分けて螺旋状にお湯を注いでいく。 豆を挽いた直後に香る匂いも好きだけど、このお湯を注いだ時に香る、少し水分が混じった感のある香りも好きだ。

感じとして、豆を挽いた直後は、乾燥してツンとする匂い、一方でお湯を注いだ時は湿りっ気のあって苦味のある匂いがする。

「ポタッ、ポタッ」と抽出されていくのを見て、ゴクリと唾を飲んだ。

そして抽出されるのを全部は入れず、少し勿体無いが途中でドリッパーを外し、いつも家で使っているマグカップにコーヒーを入れる。

そしてまたこの時に香るコーヒーの匂いも好きだ。

時刻は11時ごろ、朝7時前に家を出てからようやくコーヒーにありつけた。
ゴクッと飲む、、、。

「うん!美味しい!」

心なしか家で飲むコーヒーも勿論おいしいが、自然の中で飲むコーヒーはさらに美味しく感じる。

山頂という自然の中、ゆっくりとした時間が流れるこの時を、さっき最後まで抽出しなかった、コーヒーを最後の最後まで抽出するかの様にこの時間を堪能して今日の目的は達成したと共に、少し自分が成長したかな? と最後は頑張った自分を褒めてあげ、ベンチに横になってしばしの昼寝をすることにした。

、、、そして、まだこの時の僕は「下山」と言う、最初は気持ちも上がっていて山頂に行くと言う目的があるので幾分楽だが、登る時の高揚している気持ちが無い時の下山と言うキツイ思いをする事を知らずにいた、、、。

終わり