ソライト

自然や旅、キャンプやアウトドアに関する事などについて、自分が感じたことや思った事などについて書いています。

【短編小説】 自然の恵みを食すブッシュクラフトキャンプ 『後編』

 

夜に横になりながら焚き火に当たっている様子

(今回の記事は下の記事『中編』からの続きになります。)

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『前編』はこちら)

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 僕は釣りを共にした女性を見送ったそのあと、自分の宿営地に戻って来た。 そしてさっそく先程釣った、30センチ越えの大ヤマメを串焼きにする為、集めておいた、木の枝の中から串焼きの串に使えそうな、良い長さと細さの木の枝を探して加工し始めた。

まずは魚を刺しやすくするために、枝の先を尖らせるようにナイフを使い削っていく。 そして木の皮はナイフを立てて削っていき、仕上げとして杉の葉を木の枝に包み、それを握り込んで、余った木の皮を握りながら削ぎ落としていく。

これでとりあえず串は完成した。そして今度はご飯を炊く飯盒を吊るすためのトライポッドを作る事に。

僕はとりあえず、少し長めで、握った時に指と指がギリギリ触れ合うぐらいの太さの木の枝を3本集めた。そしてその3本の上の方をロープでしっかりと巻き付けて、3本の木をカメラの三脚のように広げて完成! 、、、と至ってシンプルな構造でできた。

それと、これだけでは飯盒は吊るせないので、飯盒を吊るすための木の枝も作る事にした。 僕はまず「枝分かれ」をしている木を選んだ。その枝分かれした部分を、トライポッドの3本の木が交差した部分に、引っ掛けるようにして使うからだ。

そしてその、枝分かれをしている反対の方の先端から2センチぐらいの所に、飯盒の取手を引っ掛けるための切り込みを入れた。 「よしっ、これで飯盒は吊るせるな!」 とりあえず飯盒を吊るすためのトライポッドは完成したので、すぐ次の準備に取りかかった。

「じゃあ今度は、お米を洗って少しの間、水に浸けとこう」

僕は飯盒に、ジップロックに入れておいたお米を入れ、お米を洗うために川の方へと向かった。 川へ向かう途中、朝から何も食べていないのでおもわずお腹が鳴ってしまった、、、。「ぐぅ〜、、、。」

川に着き、飯盒をしっかりと持って川の水をすくい入れる。そして飯盒の中でシャカ、シャカと音を立てながら洗い、また川の水をすくっては洗う、のを繰り返した。そして僕は川辺でお米を洗いながらふと空を見上げた。

すると、川沿いに立つ木々の間からはキレイな夕焼けが、、、。 僕はキレイだなぁと思いつつも「(あ、もうこんな時間かぁ、急がないと暗くなるな、、、。)」と思い、急ぎ目に飯盒の中にお米よりも倍くらいの川の水を入れて自分の宿営地に戻った。

宿営地に戻った僕は次の準備として、すぐに捌いたヤマメを焼けるように、焚き火の準備をした。 まずは細い木の枝を焚き火用に掘った穴の中心に置いて、その上に先に置いた細い薪よりも一回り大きい薪を置く、言った感じで徐々に薪を大きくしていった。

そして、いつでも焚き火ができる準備ができたので、今度は釣ったヤマメを捌くことに。

僕はヤマメを寝かせそっと押さえて、肛門から喉元までナイフを入れて、腹ワタやエラ、血合いを取り除いた。 今回釣れたヤマメは30センチ越え、出てくる内臓もそれなりに大きいし多い。 そして捌いたヤマメに串を刺し、持参しておいた塩をひとつまみ、それをパラパラとヤマメの背中側とお腹側に振り掛けた。

「よしっ、これでヤマメを焼く準備はできた」

僕は先に準備しておいた焚き火の一番下の方に、ほぐした麻紐を置いて、火を着けることに。 バックパックの中から火起こし道具をまとめ入れた、缶ケースを取り出して、僕はどの火起こし道具で火を起こすか少し考えた。

缶ケースの中にはマッチ、メタルマッチ、火打ち石等のセット、麻紐がある、僕は原始的な火起こしとして麻紐と木の枝を使って、木と木をすり合わせて火起こしをする、摩擦式発火法にしようかとも思ったが、うまく火を起こせず、時間がかかってしまうことを恐れて比較的簡単なメタルマッチで火を起こす事にした。

まずは、ほぐした麻紐の上に、メタルマッチで削り出したカスを落として、そのカスに向かって火花が掛かるように勢いよくメタルマッチを擦った。

「バチッ!バチッ!」と言う音ともに火花が出て、そのカスにうまく引火してさらにほぐした麻紐に火が着いた。そして細い薪から次に大きい薪へと火が移って行き、徐々に焚き火らしくなってきた。

そして僕は、ヤマメが刺さった串をヤマメの背中側に焚き火がくるように、地面に刺し、じっくりと焼き始めた、、、。

、、、辺りはすっかり暗くなってきていた。 木々が生い茂る川沿いの宿営地で、焚き火がひときわ明るく見える。 そしてその焚き火をバッグにしたヤマメの串焼きの様子がこれまた良い。 僕はいっとき間、その雰囲気をじっくりと味わった。

、、、僕はその雰囲気に飲まれてしまい10分ほど焚き火と焼かれるヤマメを見ていた。 焚き火に少し薪を足したりしながら、先に用意しておいた、米の入った飯盒をトライポッドに吊るして炊き始める事に。

ヤマメが焼けるのと米が炊けるまでの間まで少し時間があるので、僕は焚き火の火が自分に当たりやすくなるように焚き火の後ろに壁となるリフレクターを作る事にした。

まずは壁となる木の枝を支えるため、木を4本用意して左右に2本ずつ地面に刺した。そしてその左右2本ずつ置いた木の間に届く、長さの木を良い壁になるくらいまで積み上げて、リフレクターは完成した。

「(うん、良い具合に焚き火の火が自分に当たるようになった)」

そして焼いていたヤマメの背中側も良い具合に焼けてきたので、今度はお腹側を焼く事にした。 、、、僕はマットに横になりながらまた、焚き火と串焼き中のヤマメ、そして吊るしている飯盒をいっときの間、眺めていた。

何気に僕はこの時間が好きだ。 マットに横になりながら積み重ねている薪を手に取り、焚き火に入れていく。

、、、耳を澄ますと、焚き火の「パチパチッ」となる音と鈴虫の「リーン、リーン」と鳴く声が響いているが聴こえる、、、。

そしてブクブクと泡が出始めフタがカタカタと鳴っている飯盒を、トライポッドから取り出し、少しのあいだ蒸らす事に。

もう少しで今日初めてのご飯にありつける。そう思うと僕の気持ちが少し高揚してきた。そして僕は、さらにこの宿営地に良い雰囲気を出す為、バックパックからお気に入りのオイルランタンを取り出して、焚き火の明かりがあえて届いていない所にそのランタンを置いて火を着けた。

焚き火の勢いよく燃えている火とランタンの中で燃える小さな火、その両極端な出方をする火を僕はじっくりと、交互に味わった。

そして、串焼きにしているヤマメを確認するとなかなか良い具合になっていた。さらに飯盒の中の米も確認する。 フタをそっと開けると、白い湯気と共にご飯の甘い香りが僕の宿営地、全体に広がった。その匂いを嗅ぐと共に口の中にジュワっと唾液が出てくる。

、、、今日は朝から何も食べていない、、、今、口の中はなんの食べ物の味にも犯されていない、、、。 この状況の口内に僕は最初、「ヤマメの塩焼き」か「炊きたてのご飯」を食べるかを迷った、、、が、しかし釣ったヤマメをキャンプで串焼きにして食べるなんてなかなか出来ることではないぞ! 僕はほとんど迷う事なくヤマメが刺さっている串を手に取った。

「、、、ゴクリッ」、、、唾を飲む、、そして大口を開けて塩の香りがほのかにするヤマメのお腹部分に思っ切りかぶりついた、、、。

僕は一口、二口とじっくり噛みしめる、、、。

「うっ、う、うまいっ!!!美味!!!」

カリッとした皮にジューシーな身、口の中に広がるヤマメの旨味、脂味、塩味の三味が僕の飢えた口の中を、あたかもまだ生きているヤマメのような感じで乱暴に駆け巡っているようだ! 僕はもう一口かぶりつき、口の中にヤマメの身が残った状態で、炊きたてホックホクのご飯もありついた!

「はぁ〜っ! この上ない幸せ!」

僕は多分このキャンプ場の中で一番に幸せなひとときを過ごしてる、とそんなことを思いながら、その後も至福のキャンプ飯を食べ続けた、、、。

、、、、、、。

「ご馳走様でした!」 僕は最高のキャンプ飯を食べてお腹いっぱいになったのも束の間、続いて寝る準備に取りかかった。 少し炭火とかした焚き火を横にズラして、新たに薪を組み始める。これからは寝袋に入るので、なるべく長時間燃え続けてくれるような薪の組み方をする事にした。

まずは大きい薪を一番下に隙間なく並べていく。そしてその上に先に置いた薪よりも小さい薪を互い違いにしてだんだんと載せていく。 積み上げた薪の形はまさにピラミッド状のような感じ。

そしてその一番上に先程の炭火とかした薪を載せ、燃え出すのを待つ事にした僕は、その間にバックパックの中から寝袋を取り出して寝る態勢になる。

、、、寝袋に入って仰向けになる、するとそこには木々の間からかすかに見える、星が、、、。 星つぶがキラキラと光るその様子に見惚れていると、徐々に火が大きくなっていく焚き火の灯りで、生い茂っている木々やその葉っぱが照らされていった。 焚き火の暖色に染まった木々、そしてそのバックにかすかに光る星、、、。その風景を見ながら僕はそのままフェードインするようにまぶたを閉じて、眠り世界に入っていった、、、。

、、、、、、。

「ザァー、チュン、チュン、ピーッ、ピーッ、ザァー、、、。」

そして翌朝、、、川が流れる音と鳥の鳴き声が響く中、僕は目を覚ます。 眠い目をこすりながら焚き火の方を見ると、すっかり灰と化した焚き火がそこにはある。僕は寝袋から出てグッと背伸びをする、すると僕の気配に気づいたのか鳥たちが、バサバサッー!と飛んでいくのが分かった。 さらに背伸びをしている僕に木々の間から太陽の陽が当たり、ほのかに暖かさを感じた。

気持ち良い朝。 僕はマットの上に座り、帰る前に少しだけ焚き火を楽しもうと思い、再び簡易的に薪を組んだ。 そして缶ケースの中から火打ち石で火を起こすためのセットを取り出し、その中から自作のチャークロス、火打ち石、そして2種類持って来ていた火打金を出した。 ここで2種類ある火打金、どちらを使おうか迷っていると、宿営地を探している様子のキャンパーさんが現れた。

そのキャンパーさんは僕に話しかけて来た。「あっ、どうもこんにちはぁ」

「こんにちはぁ、宿営地探してるんですか?」

「そうですそうです。 それにしても良い感じの基地が出来てますね! ギアが自然に溶け込んでいてめっちゃ良い感じです!」

その言葉を受けて僕は嬉しくなった。「いやいやぁ、そんなことはないですよ」

「おっ? 今から火起こしですか?しかも火打ち石で!?良いですねー! 僕も最近になって、ブッシュクラフトスタイルに憧れて火打ち石を使って火起こしをしてみたいなぁなんて思ってたんですよ! ちょこっとだけ火起こしする所を見てても良いですか!?」

僕は一瞬、「うっ、、、どうしよう」とも思ったが、僕の宿営地を褒められたのと、ブッシュクラフトに憧れる同士として快く「全然良いですよー!」と言い、火起こしを始めた。

僕は「指で挟んで使うタイプの火打金」と「ナックルの様に握り込んで使うタイプの火打鎌」から、指で挟んで使う火打金を選んだ。 そして火打ち石とチャークロスを左手で持ち、右手に火打金を持って勢いよく火打ち石を弾いた。 弾くと火花が出て一発でチャークロスに乗った。 僕は心の中で「(うおぉぉ、一発で乗ったぁぁ)」と思い、少し気持ちが高揚したが、何くわぬ顔でそのチャークロスに付いた火種を、組んである薪に着けて見事に焚き火をつける事に成功した。

するとその様子を見ていたキャンパーさんが「うわぁ、スゴイ!一発で付けた! さすが上手ですねー!」と言ってくれた。

僕は、実は普段だと、ここまでうまいこと付けられないんだが、少し玄人キャンパーに思われたいと思って、つい「いやぁ、慣れれば簡単ですよー!」なんて事を言ってしまった。

と、続けて調子に乗った僕は、「良かったら、使ってみますか?」と言うと、そのキャンパーさんも嬉しそうに「良いんですかぁー!?」と言って、別に僕は人に教えられるほど上手い訳ではないがそのキャンパーさんに火打ち石を使った火起こしのレクチャーをし始めた。

しばしの間、火起こしのレクチャーが続き、いざ着けるとなったそのキャンパーさんは緊張した様子で、火打金を持ち勢いよく火打ち石を弾いた。 1回、2回、、、何度も打ち続ける、、、。

「うわぁ、火花は出るけど、なかなかチャークロスに火花が乗ってくれない!」

と言う、キャンパーさんに対して僕は、得意げに「いやぁ最初はそんなもんですよーっ」と言う。

その後もひたすらに打ち続けるが、なかなか着かない様子だったので、僕はもう一つの火打鎌を使ってみるように促した。

そのキャンパーさんは少し悔しそうだったが、もう一つの火打鎌を手に取り、勢いよく弾いた。 すると一発でチャークロスに火花が乗った。

「わっ!やったー! 乗りましたよ!」とすごく嬉しそうだった。

それを見た僕は、心の中で「(えぇぇ、いっぱつぅぅ!?マジかよ!?)」と思った。

そしてえらく喜んでいたそのキャンパーさんを見た僕は、その火打ち石とナックルタイプの火打鎌をあげる事にした。

「えっ!? いいんですかぁ!? もらいます、もらいます!」と言ってとても喜んでくれた。

そして僕とそのキャンパーさんは着けた焚き火が消えるまでの間、キャンプ談議もといブッシュクラフト談義をした、、、。

そして焚き火が灰と化してきたので、そのキャンパーさんとの楽しい談議は終わることにして、僕は宿営地の後片付けをする事にした。

「いやぁ、朝から楽しい話ができて良かったです。火打ち石と火打鎌ありがとうございました! さっそくこの後の火起こしでも使ってみようと思います。 じゃ、またどこかで!」と言い、そのキャンパーさんは自分の宿営地探しに戻って行った。

そして僕も設営していた物や焚き火を片付け終わり、帰ることに、、、。

車の中、、、帰る道中、今回の渓流釣りとキャンプで味わったことを思い出して、優越感に浸っている僕。 そして今度はフライフィッシングやハンモック泊にも挑戦したり、さらにブッシュクラフトスタイルに磨きをかけていこうと思いながら、今回のブッシュクラフトキャンプは終わった、、、。

【短編小説】 自然の恵みを食すブッシュクラフトキャンプ 『後編』

終わり