ソライト

自然や旅、キャンプやアウトドアに関する事などについて、自分が感じたことや思った事などについて書いています。

【短編小説版】 自然とコーヒーを満喫する至福の休日

高千穂峰の稜線でたたずんでいる人をドローンから撮った写真

 

 2020年の年末、今年ももうあと数十日で終わる。 僕は今年最後のアウトドア活動として「霊峰 高千穂峰」に登山をしようと計画していた。

高千穂峰は標高1,574mの宮崎県と鹿児島県の県境に位置している山で、周りには霧島連峰韓国岳や今も時々だが、小さい噴火を繰り返している新燃岳があり、その中でも一際目立つ存在なのが「高千穂峰」。 宮崎県内のどの辺りからでも大体は見えて、遠くから見ると特に三角形に見える。 人によってはその三角形の形から高千穂峰の事を「三角山」と言ったりしている程。あと夕陽が沈む方向に高千穂峰はあるんだが夕焼けをバックにした高千穂峰及び霧島連峰はかなり綺麗だ。※写真①

僕自身、高千穂峰は今までに3〜4回ほど登ったことがあるくらい、宮崎県内の山の中でも特に思入れのある、尚且つ大好きな山。 その山に今年最後の締め括りと言うこととそして初めて高千穂峰でドローンによる空撮をしようとも計画している。

 そして高千穂峰登山の前日の今日、僕は仕事が終わって真っ直ぐ家に帰り、早速明日の準備をする事にした。 ドローンを出してドローンの整備不良が無いかの点検をする。 ネジの緩みが無いか、バッテリーの残量はあるか、プロペラの破損等は無いか、安全に飛行できる様に細かい所まで点検をする。 、、、僕が使っているドローンは僕自身が初めて買ったドローンで、今までも色んな場所で飛ばしてきた思い入れのあるドローンだ。 例えば宮崎県の中でも比較的手軽に登れる「双石山」。青い海と綺麗なビーチが見所の「石波海岸や青島ビーチ」など。

そして今回は初めて高千穂峰、初めての、標高1500mはある所での飛行なのでそれなりにドキドキ感もあるがそれと同じくらいワクワク感もある。

整備が終わり、ドローンとその他に必要な物もバックに入れる、そして今回の登山で何気に初めて使うのが「ハイキングポール」だ。 以前までの僕はなぜか、山では自分の足のみで歩きたいという変なこだわりがあった。 でも今回はドローンを飛ばす目的もあって、集中力が必要になってくると思われる。そこで少しでも体力温存というか、疲れない様にするために今回はその変なこだわりを捨てて、初めてハイキングポールを使うことにした。まぁ、後にそのポールの利便性というか、有ると無いのとではの違いを痛感させられたのは言うまでもなかった。 とりあえず今日、準備する事は終わったので、これからは明日に備えてゆっくり休む事にした。

そして翌朝、、、。

 年末の宮崎の朝、南国宮崎とは言えそれなりに朝は冷える。 「チュン、チュン」と言う、鳥の鳴き声と共に家の近くに立っている杉の木達が、昇ってきた太陽によって照らされ、地面に近くにある植物達も徐々にその様相をあらわにし始めた。 澄んだ空気のおかげか、植物達もいささか気持ち良さそうで尚且つまだ眠そうだ。

、、、「シューゥゥ、、、。」 お湯を沸かしている電気ケトルの注ぎ口から湯気が出ている。 高千穂峰登山当日の朝は、山頂で飲む為のコーヒーを作る準備をしている。

そして最近は、コーヒー豆を挽くところからコーヒーを作るのに凝っていて、ちなみに今回は、最近買ったコーヒーミルとポットを使う。 ミルはアンティークタイプの物でレトロ感がとても渋い、それとポット、コーヒーを作る為のポットは注ぎ口が独特な形になっていて、お湯を、挽いた豆にかけやすいように作られている。

僕が買ったポットはつや消しが良いポイントで、選んだ理由も、このつや消しが一つの理由にある。僕は基本つや消しになっているアイテムが好きだ、、、。

まぁそれはいいとして、豆をミルの器に入れて挽いていく、「ガリガリガリガリ、、、。」この豆を挽いている時の音がなんとも言えない気持ち良さがある。 挽いた豆をドリッパーに入れ、ポットにも沸かしておいたお湯を入れる。

そしてここからが集中するところ、挽いた豆が入ったドリッパーにお湯を注いでいく。 まずは一気にお湯を入れず、粉全体にお湯が行き渡るくらい入れ、30秒ほど蒸らす。 30秒ほど経ったら、円を描く様にお湯を注いでいく。この作業を3〜4回繰り返してコーヒー作りは完成。 出来上がった後は、冷めないうちに保温ボトルに入れ、これで全ての作業は完了、いざ高千穂峰に向けて出発する。

「ゴォー、、、。」

車の中から見える外の空気は、相変わらず澄んで見える。 橋を渡り、町中を通る、ひたすら車を走らせていると見えてきたのが、高千穂峰及び霧島連峰。 さすが「霊峰 高千穂峰」その威厳あるたたずまいはどの山よりも貫禄がある。

更に車を走らせていると、一際、高千穂峰を望めそうな場所があった。 せっかくなので少し寄り道をして記念に写真を撮る事にした。カメラと三脚を持って橋の上に行き、おもむろにシャッターを切っていく。 、、、それにしても今日は良い天気に恵まれた。もしかしたら今まで見た中で一番綺麗に高千穂峰が見えるかも知れない。※写真②

良い写真も撮れたので、あらためて高千穂峰を目指す事にした。 、、、車中、陽の温もりを感じながら車を走らせていると、赤く色付いているモミジやカエデのトンネルがあった。 まさか年末に紅葉が見れるとは思っていなかったので、少しビックリしたと共に植物が醸し出す美しさも感じた時だった。その紅葉のトンネルを通り抜け登山道入り口に向かう道を走る。

細くクネクネとした道を何十分も走る。 木々の間から差し込む陽が眩しくもあるが、これから高千穂峰を登る僕を歓迎している様な感じもする、、、。

、、、そして登山道入り口にある駐車場に着き、駐車料金を支払い車を止める。 到着したらすぐに登山の準備をする。 登山用のシューズを出し、キツく紐を結び。忘れ物は無いかの確認をして、ドローンやコーヒーなどが入ったバックパックを背負い、いざ高千穂峰登山の開始だ。

車を駐車している駐車場の前には鳥居があり、そこで僕は一礼をし、鳥居をくぐり前へ進む。 およそ200mほどはある砂利の道を行き少し右に曲がると見えるのが、階段と鳥居。 その鳥居をくぐった先には小さな祭壇がある。 そこでお参りをして先に進む。

 、、、そして気づけば空は青くなっており、褐色色の高千穂峰周辺の木々や大地も本来の色合いを取り戻したように思える。 そしてこの鳥居を過ぎた辺りから、この高千穂峰登山は本番を迎える。

僕はショルダーハーネスをしっかりと握りしめて歩みを進める。 石畳の山道、ゴツゴツとした道につまずかないよう慎重に歩いていく。 葉が付いていない木々の間から陽が差し込む。 そのせいか通常は寒く感じるであろう山の山腹でも少なからず暖かく感じる。

現れる石畳の階段、そこには褐色色の落ち葉がひしめき合ってる。

「バリッ、バリッ、、、。」 、、、落ち葉の上を歩いていく、普段より重い荷物を背負っているせいか、少しばかり落ち葉を踏んだ時の音も大きく感じる。更に歩みを進める。すると段々、登山道っぽくなってきた。 心なしか足を上げる高さも高くなってきている。

砂混じりの道を歩いていく、歩く度に巻き上がる砂ホコリ、その砂ホコリが僕のシューズに薄いながらも積もっていくことで、段々と高千穂峰の色に染まってくる。

着実に高度が上がってきているのが分かる、それもそのはず、少しずつ自生している植物達が少なくなってきているからだ。 そうすると、段々と景色が良くなってきた。遠くに見える霧島連峰や眼下には褐色色と緑色の大地が広がっている。

この景色を見た僕は一旦足を止め、持ってきたドローンを出し空撮ををする事にした。ドローンを出し、コントローラーにスマホをセットして、周りに人がいないかなどの安全確認をし、スマホの画面に出ている離陸ボタンを押す。 プロペラが勢い良く回りだし、2mほど上昇すると一旦ホバリングをする。 僕は再度安全確認をしてドローンを操縦する。 ドローンから転送される映像を見ながら撮影ボタンを押し空撮を開始する。 スマホの映像からでも分かるその素晴らしい景色に感動を覚えながらも慎重に操縦していく。 そして一通り撮り終えた僕は素早くドローンをしまって、まだまだ続く登山道の、先を進む事に。

するとこの辺りから、急な登りとゴツゴツした溶岩が固まった様な後を登っていく。 歩きやすい箇所を見つけて進んで行くが、急な登りに疲労を感じてきた僕は、ここで持参していたハイキングポールを使う事にした。 ポールを自分の使いやすい長さに合わせて使ってみる。 一歩また一歩、歩く度にポールを支えにして歩く。

「うん、確かに楽、、、。」重かった荷物も幾分か軽く感じる、この時、早く使っとけば良かったと思ったのは言うまでもない。

急だった登山道もいつかは終わりが来るもので、少し緩やかな道になってきたので歩きながらも周りを見てみると、着実に登ってきたんだなと彷彿させる景色が広がっている。 天気が良いのでいつもよりも遠くが見渡せるが、この時点でこんなに良い景色だと、頂上はどれだけ良い展望が見れるんだろうと少し心が躍った。

、、、進んでいると先程のゴツゴツした道とは違い、非常に歩きやすい道が続く。しかしこの道は稜線、片側には何百メートルは続いているであろう砂利や岩場がある斜面、片側には火山口に続く斜面。 登山道は2〜3メートルの幅はあるがよそ見をして歩くのは危険だ。 なので、あるきながらも景色は楽しむが、楽しみ過ぎて下に落ちていかないように足元はしっかり確認しながら歩いていく。

そして山の部分部分に付いている名称で「鞍」と呼ばれるラクダのコブの間のような場所に着くと、再び現れるのが小さな鳥居と祭壇。 そしてその付近には「ケルン」と言う幾つもの石が積まれたものもある。 その積まれた石の数を見て、今までどれだけの人が高千穂峰を登ってきたのかが分かる。

そしてここまで来たら、もう少しで山頂という事でもあると、僕の中では感じている。 ここからはまた砂利の登り道がメインになってくるので、砂利で滑らないように、一歩一歩しっかりと歩みを進め、そしてようやく山頂にたどり着いた。

、、、山頂には今にも天を貫きそうな「天の逆鉾」がたたずんでいる。 そして周りを見渡すと、確実に今まで見た中でも一番の展望の良さがそこには広がっていた。僕はこの景色はなかなか見れないと思い、おもむろにカメラを取り出して写真を撮っていく。※写真③

一通り、撮り終えた僕は、ここで朝に作ったコーヒーを飲む事にした。バックを置いて砂利のところに直接座る。 この時、本当は地面に敷くマットを持って来ておいたんだけど、自然を直に感じたいとそのまま座る事にした。

バックからコーヒーの入ったボトルを取り出して飲んだ、、、。 ここで大体の予想はついていたが、少しコーヒーが冷めていてぬるくなっていた、、、。

まぁでも、山頂で飲むコーヒーは冷めていようが美味しい!それは確実に言える。

そして、コーヒーを味わったのも束の間、ここでまたドローン撮影をする事にした。 、、、さすがは12月の高千穂峰山頂、寒いし少し風も出て来た。 僕は風の様子を確認しながら、ドローンを飛ばすタイミングを見計る。 そしてなんとかかんとか撮影もして、今回の目的でもあるドローン撮影を終えた。

と、気付いたら辺りは少しずつ暗くなって来たので、僕は最後に天の逆鉾があるところに行き一礼をして下山を開始した。

この後は、登ってきた道を再び戻っていく地味な過程になるんだが、少し暗くなって来たのもあってか、これはこれで良い景色が見れた。ここでもちろん写真を撮る、でも真っ暗になる前には登山口入り口に到着したいなと思い、急いでシャッターを切っていく。※写真④

本当、段々と暗くなって来たので、撮影を切り上げて早々に下山を再開した。 早まる足だが、下山する途中に見れる景色が相変わらず良くて、思わず写真を撮りたくなる、、、が、我慢して下っていく。 と、この下山中に本領発揮したのがハイキングポールで、特に登りの時に苦労した急な登り場では、ポールを支えにして下っていくと大分楽に感じた。 そしてやっと多くの植物が自生しているところまで降りて来た。 しかしこの時にはもう辺りは暗くなって来ていて、ヘッドライトを頼りに歩いて行く。 そしてようやく駐車場前にある鳥居に着き、疲れた身体にムチを打って最後に鳥居に一礼をして今回の高千穂峰登山は終了した。

今回の高千穂峰登山は今年最後を締め括る最高の時間だった。 そして来年にはまた、登りに行くんだろうなぁと、帰りの車中で思っている自分がいた。

 

※写真①

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※写真②

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※写真③

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画像4

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※写真④

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